基礎工の概念覆す「トップベース工法」
   日本材料学会の"15年度技術賞"を受賞
(株)原田興産(熊本市) 上野 太誠氏


 一昨年のこと、熊本県玉名振興局所管のたまきな橋(玉名市)右岸側道路にボックスカルバートを埋設し、車が通行できるようにする作業が難航した。地盤の下に45トン級の石がごろごろあり、転石の層が広がっている。基礎工事を行うには通常の工法では困難だった。
 打開を図るべく設計担当者が連絡を取ったのは、コンクリート二次製品メーカーの(株)原田興産(熊本市、原田省二社長)。「表層の処理だけでどうにか支えられないかと言われた。数ある工法の中で、うちの会社に依頼があったことが正直嬉しかった」と原田興産開発事業部の上野太誠課長は、信頼を勝取った喜びを語る。
 原田興産は、基礎工の概念を覆した「トップベース工法」を県内で唯一、製造・販売している。この工法は、独楽(こま)の形をしたコンクリート製品「マイ独楽」を地盤に埋設し、隙間に間詰砕石を入れで基礎を固めていく仕組み。当時、工法普及のため熊本県をはじめとした発注機関に営業を展開していた。その結果が見事に成就した瞬間だった。
 トップベース工法の心臓部となる「マイ独楽」が産声をあげたのは25年前で、静岡県の松井淳氏が考案し、特許を取得。日本に古くから伝わる玉石敷設工法をヒントに、玉石の威力を現代に甦らせようと研究を重ねた結果、独楽の形をしたコンクリートブロックにたどりついた。
 後に原田興産を含む7社でトップベース工法の専用実施権を取得し、全国マイ独楽工業会(飯塚弘芳会長)を昭和59年に設立。現在までに会員企業は32社。考案した松井氏の意思を受け継いだ会員達が全国で普及活動中だ。
 工法の特徴には@極めて軟弱な地盤でも構造物を安全に支えるA耐震効果があるB沈下を抑制し不同沈下を防止するC地下汚染がなく環境にやさしいD狭小地でもできる簡単施工−などがあり、基礎地盤工に優れた能力を発揮する。
 土木では主にボックスカルバートを、建築では5階建以下の建物に使われており、現在の熊本でのシェアは土木が9割、建築が1割。上野課長は「建築に関しては、まだまだ営業不足ではあるが、形が珍しいので一度見たら忘れられない特徴もある」とこの工法に不可欠な独楽≠フ特徴を説明する。国・県など発注機関の評判もよく、コンサル会社や設計事務所にも徐々に浸透しつつある。
 13年度には、(財)日本建築センターの「建築物等の施工技術及び保全技術・建設技術審査証明」を取得し、課題となっている建築分野での進出も開けてきた。さらに、今年度には、全国マイ独楽工業会が(社)日本材料学会の15年度技術賞を受賞。工法に対する研究活動、実績が高く評価された。今後は日本だけに留まらず、世界各地に普及させていく方針だ。玉石の威力を持った独楽が考案した松井氏の思いとともに世界中を駆け回る日も近い。
2004.06.28掲載

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