国土交通省阿蘇砂防事務所
所長 坂井佑介氏
九州の砂防事業をリード


 2021年に新組織として設置された国土交通省阿蘇砂防事務所の2代目所長に坂井佑介氏が就任した。前職の国土技術政策総合研究所では5年間にわたり、熊本地震で発生した土砂災害をテーマとした研究に従事した。阿蘇地区の特性を知る坂井所長は「研究で得た知識、技術を現場に生かし、地域の安心・安全に努めるとともに九州の砂防事業をリードしていきたい」と力を込める。


――入省後の心に残っている出来事は
 九州地方整備局の河川計画課に勤務していた際、熊本地震への対応で、阿蘇大橋地区斜面防災対策工事や阿蘇山直轄砂防事業の新規事業化などに携わった。非常に忙しい毎日だったが、数多くの関係者とともに災害対応にあたった。この時の経験がその後の仕事に生かされていると思う。
 阿蘇には縁があり、思い入れが深い場所で、仕事ができることは感慨深いものがある。地震直後は斜面崩壊現場を見て心を痛めていたが、復旧が完了した斜面や国道57号、行列ができる飲食店の様子を見て、復興が着実に進み、活力が戻ってきていることを実感している。

――事業の進捗状況は
 砂防堰堤等を25施設程度整備する計画で、これまでに6施設が完成している。今年度は事業費約20億円を投じ、11カ所で工事や測量設計に取り組んでいく。
 工事の実施にあたり、昨年度から砂防堰堤施工時のコンクリートの配合の工夫を行っている。従来のスランプ5からポンプ車による打設が可能なスランプ8 のコンクリートを使用することで工期の短縮を図っている。今後とも、生産性向上の取り組みを進め、効率的な事業執行に努めていきたい。

――先月、無人化施工訓練を初めて実施されましたが
 災害が多い地域であるため、発災時に迅速かつ安全な対応が図れるよう、日頃から訓練を実施することが重要だと考えている。参加者からは有意義な訓練だったとの声を聞く一方で、操作が難しく定期的な訓練や実際の現場条件に合わせた訓練が必要などの貴重な意見を頂いた。より有益な訓練となるよう改善を図っていく。

――業界へのメッセージを
 狭隘な現場もありご苦労が多い中での砂防事業へのご協力、また災害が発生した際、迅速に対応していただける建設業者・コンサルタントの皆様に心より感謝を申し上げる。
 建設業界は、担い手確保や罰則付きの時間外労働規制への対応など、大きな転換期を迎えている。当事務所としては適正工期や施工時期の平準化、建設DXを始めとする生産性の向上に取り組むとともに、意見交換などを通して課題解決に繋げていきたい。
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【略歴】坂井佑介(さかい・ゆうすけ)。京都府立大学大学院博士前期課程修了、2007(平成19)年入省。北陸地方整備局金沢河川国道事務所、九州地方整備局河川計画課などを経て、18年から国土技術政策総合研究所土砂災害研究部砂防研究室の主任研究官を務めた。福井県出身。1981(昭和56)年生まれ、42歳。
2023.6.26掲載

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