熊本県土木部
部長 亀崎直隆氏
50年後、100年後の更なる発展を
熊本のポテンシャル「最大限に生かす」

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 熊本県土木部長に4月就任した亀崎直隆氏は、西日本建設新聞社のインタビューに応じ、令和2年7月豪雨災害と熊本地震からの創造的復興に取り組むとともに、熊本のポテンシャルを最大限に生かし、50年後、100年後の更なる発展に繋げる決意を示した。交通の課題には、「10分・20分構想」をはじめ広域道路ネットワークの早期実現に意欲を見せる。建設業界に対しては、業種や地域性などきめ細かな視点で対応していく。




――就任にあたっての抱負を
 令和2年7月豪雨および熊本地震からの創造的復興を進めるとともに、国土強靱化や持続可能な建設産業の実現など将来に向けた取り組みにも力を入れていく。
 更に、熊本が有するポテンシャルを最大限に生かし、TSMCへの対応など、知事が言われている「五つの安全保障」への貢献や、魅力ある地域づくりに取り組むことで地方創生を実現して、50年後、100年後の熊本の更なる発展に繋げたい。

――県では益城町において創造的復興のシンボルとなるまちづくりを進められています
 熊本高森線の4車線化は、本年3月末時点で約9割の用地取得が完了した。歩道部は、上下線約3・7`区間で工事着手し、約1・8`が完成するなど、復興後の姿が目に見えて着実に進んでいる。2023年度末までに熊本市方面から惣領交差点までの約1・6`を供用したい。
 木山地区の区画整理事業では、約7割の仮換地を終え、順次、宅地造成工事を行っていて、約2割にあたる88画地の引き渡しを行った。最も被害が大きかった宮園地区196区画について23年度末までに概ねの宅地引き渡しを終えたい。

――令和2年7月豪雨災害への対応では、人吉市の青井被災地市街地復興土地区画整理事業と球磨村の被災住宅移転促進宅地整備事業が本格的に動き出します
 22年度の組織改正・人事異動で、球磨地域振興局土木部に「まちづくり用地課」と「まちづくり工務課」を新設した。専任の副部長及び人吉市から3人と球磨村から1人の派遣職員を含め14人体制で事業推進にあたる。また、人吉市に県から1人の土木技術職員を派遣しており、県と市一体となってまちづくりを推進していく。
 5・2fを対象とする区画整理事業は、市が3月に都市計画決定しており、今後、国の事業認可を経て整理事業がスタートする。宅地整備事業については、居住エリア2地区と避難路の用地取得、造成、工事等を進める。
 熊本地震、7月豪雨とも、被災された方々の一日も早い生活再建に向け、誰一人取り残さないよう、関係自治体と連携しながらスピード感をもって取り組む。

――熊本県新広域道路交通計画において「10分・20分構想」が掲げられました
 熊本市中心部から九州縦貫自動車道まで約10分、熊本空港まで約20分で結ぶ構想の実現に向け、新たな高規格道路3路線を位置付けた。
 21年11月には、知事と熊本市長が「実現に向けて連携して取り組むこと等」を合意。熊本都市圏連絡道路経済効果等検討会では、年1500億円の経済波及効果等が公表され、県議会の高速交通ネットワーク整備推進特別委員会から、実現に向けた強い要望もいただいている。
 22年度は、交通流動の精査、政策目標の検討、周辺環境や土地利用状況への影響調査、概略設計等を予定しており、国、県、市で認識・課題を共有し、具体的な検討を進めていく。

――セミコンテクノパーク周辺の渋滞対策も課題です
 短期施策として渋滞のネックとなる交差点を改良するとともに、南北方向の交通を分散するため、菊陽町と共同で21年度から都市計画道路菊陽空港線の整備に事業着手した。TSMCの進出決定を受け、知事をトップとする「半導体産業集積強化推進本部」が設置され、「渋滞・交通アクセス対策部会」で交通課題のきめ細かな対応を検討している。
 更なる企業集積が見込まれることから、中九州横断道路に設置予定のインターとのアクセス道路も必要だ。対策部会に加え、県と地元自治体で組織する「菊池南部総合交通研究会」で協議・検討しながら、時間的緊迫性を持って取り組む。

――そのほかの道路整備状況を伺います
 熊本天草幹線道路を構成する本渡道路(L1・3`)は、22年度の開通に向け工事を進めている。大矢野道路(L3・4`)については、22年度にトンネル(L925b)工事を発注予定で、同道路初めての本体工事となる。本渡道路が22年度に完成すれば、23年度からは大矢野道路に切れ目無く予算を重点投資できる。事業の加速化を図りたい。
 「すべての道はくまもとに通じる」という考えのもと、幹線道路のネットワーク化が重要だ。横軸に中九州横断道路と九州中央自動車道、熊本天草幹線道路、縦軸に有明海沿岸道路と南九州西回り自動車道があり、いずれも事業が進められている。一方、有明海沿岸道路は事業区間が荒尾市の競馬場跡地まで伸びてきたばかり。熊本県域にどう延伸していくかが課題の一つではないか。

――新3K推進プロジェクトに取り組まれています
 建設産業が若者から選ばれ、持続可能な産業となるためには、長時間労働の是正や生産性の向上、働き方改革等が推進され、新3K(給与が高く、休暇が取れ、希望が持てる)への転換が必要不可欠だ。
 22年度は小中学生と保護者へのアプローチにも力を入れ、建設産業の役割や重要性を発信し、イメージの底上げを図っていく。高校3年生対象の企業説明会(魅力発見フェア)等も、会場でのブース展示に加え、オンライン配信など、雇用創出に繋がるより効果的な取り組みを実践していきたい。

――働き方改革に向けた取り組みも不可欠です
 22年度から、「週休2日工事」は災害復旧や維持補修、緊急を要する工事を除く全工事で発注段階から週休2日達成を前提とした積算方式に改正し、「ICT工事」については、現行の「受注者希望型」に加え、災害復旧を含む土工量1万立方b以上の土工工事を対象に「発注者指定型方式」を導入した。
 週休2日導入のきっかけとなるよう「現場一斉閉所」や、受発注者の省力化に向けた「遠隔臨場」も試行し、働き方改革を推進している。
 建設キャリアアップシステムについては、建築工事でモデル工事を実施しており、検証を踏まえ、更なる普及を図りたい。あらゆる機会を通じて、県内建設業者への周知、活用促進を働きかけていく。
 行政のDX化も急務だ。現在、土木部各課が保管・管理する台帳やシステムの一元化を進めている。GISの地図情報を共有化し、迅速な災害対応を図っていくことも目指している。
 将来的には、公共土木施設等の台帳のインターネット上での公開や、国土交通省データプラットフォームのシステムと連携することで、県民や事業者の利便性向上に繋げたい。

――県内建設産業界へのメッセージをお願いします
 社会基盤整備や維持管理はもとより、災害や鳥インフルエンザに係る防疫対策への対応など、地域を守る建設産業の役割はますます増大している。50年後、100年後の熊本の更なる発展の礎をつくる上でも、大いに活躍され、元気に働いていただけるよう、持続可能な環境づくりに取り組むのも私たちの仕事の一つだ。
 考え方で大切なのは、会社規模もだが、幅広い業種のそれぞれが無くてはならない存在だということと、地域に業者がいないと災害時に道路も啓開できないということ。この二つを念頭に置いて、きめ細かに対応していきたい。

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(かめざき・なおたか)
1963年4月10日生まれ、熊本市在住、87年京都大学工学部土木工学科卒業
職歴=87年熊本県採用、2016年河川港湾局港湾課長、18年道路都市局道路整備課長、20年天草広域本部土木部長、同年8月企画振興部球磨川流域復興局土木技術審議監、22年土木部長。
2022.5.20掲載

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