国土交通省立野ダム工事事務所
所長 甲斐公久氏
現場と一体で早期完成目指す

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 2012年7月の熊本広域大水害では白川沿川が甚大な被害を受けた。建設中の立野ダムは熊本市をはじめとする下流市町を洪水被害から守る砦であり、避難行動を判断する中心的な役割を担う。7月に就任した甲斐公久所長は「大変意義のある事業で、課せられた責任の重さを感じている。プライドを持ち、事務所と現場が一体となって、一日も早い完成を目指す」と力を込める。




――入省後の心に残っている出来事は
 河川畑を歩み、主に九州内の直轄河川改修の事業計画に携わってきた。川内川河川事務所の副所長を経て、前職の本省水管理・国土保全局治水課では堤防技術を担当した。川が好きなので、天職だと思っている。熊本では緑川下流出張所所長の時に、高潮対策事業と流域住民連携に取り組んだ。高潮対策では、事前の各種調整は大変だったが、着工の説明会で、住民から拍手と感謝の言葉を沢山頂いたことが印象に残っている。住民連携による河川協働管理では、河川協力団体の皆さんと源流の植林や流域清掃、防災教育などの活動を通して、河川管理の理想像を垣間見ることができた。

――目指すべき事務所像を教えてください
 人それぞれ個性があり、得意なこと、不得意なこともあるが、地域の皆さんが納得される良い成果を残すためには、チームとして連携しつつ、様々な能力を持つ個々が力を発揮することが重要だと思っている。モチベーションを上げ、維持させるのが自身の役目かと。

――立野ダムは直轄初の流水型で整備されています
 現在の河床付近に5b×5bの洪水吐を3門設置する。平常時はダムに水を溜めず、洪水時のみ一時的に貯留するため、貯留型に比べ環境への負荷は小さいと考えられる。工事は22年度中の完成に向け、昼夜2交代で施工を進めており、ダム本体のコンクリート打設が2割ほど完了したところだ。
 景観設計については、熊本大学とタイアップして取り組んでいる。細部にまで拘っており、シンプルで美しいダムを目指している。完成後は阿蘇地域の新たな観光体験・交流の場として、地域に根ざしたダムになってほしい。

―― i―Conのモデル事務所に指定されていますが
 ICTを活用し現場の生産性向上を推進している。マシンガイダンス(MG)やマシンコントロール(MC)を搭載した重機で施工を進め、測量から3D地形モデルの作成にはドローンを活用し、CIMモデルから施工数量を算出した。出来形管理ではウエアラブルカメラを使用して遠隔立会を行い、移動・待機時間の削減に加え、新型コロナの感染拡大防止に繋げている。

――地域建設業者へのメッセージを
 平時の維持管理から災害時の緊急対応など、地域にとって建設業は無くてはならない存在。将来を担う若手技術者や学生の希望となるよう、i―Conや週休2日などの新たな取り組みを積極的に行って頂きたい。九州の現場から新しい風を起こしていきましょう。

◇  ◇  ◇
【略歴】甲斐公久(かい・きみひさ)。1993(平成5)年に建設省入省。山都町出身、1968(昭和43)年生まれ。
2021.11.4掲載

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