国土交通省熊本港湾・空港整備事務所
所長 島村辰一氏
作業船の維持と乗組員の環境改善

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 国土交通省熊本港湾・空港整備事務所の所長に4月、島村辰一氏が就任した。港湾工事と災害復旧の円滑な推進には「地域建設業者と作業船が必要不可欠だ」と強調。地元企業が保有する作業船の減少を憂慮するとともに、乗組員の労働環境改善に向けた取り組みを模索する。




――昨年の7月豪雨では県南部を中心に大規模な被害が発生しました
 八代海に流入した流木等が航行船舶に支障を与えないよう、早急な撤去・回収が求められた。当事務所の2隻、関門航路事務所の1隻、災害協定団体から派遣された民間の「クレーン付台船」を使い、発災直後から1カ月程で2019年1年分の12倍に相当する流木等を回収した。
 八代港では、球磨川からの土砂流入により航路と泊地が埋没したため、昨年から災害復旧事業で埋没個所の浚渫に着手し、今年度で完了する。今後も、災害への備えを万全にし、万一発生した場合はしっかりと対応したい。

――所管事業の現況を
 熊本港・八代港港湾整備、熊本空港整備、本渡瀬戸開発保全航路、有明・八代海海洋環境―の4事業を進めている。
 熊本港においては、防波堤(南)の延伸を進めており、更に、熊本県と熊本市から要望のある耐震強化岸壁について、県・市・国と共同で検討している。
 八代港では、先ほども述べたが、災害復旧事業による航路と泊地の浚渫を行っている。航路(マイナス14b)については、早期に浚渫できるよう、土砂の受入れ先となる大築島に直轄土砂処分場の整備を進めている状況だ。
 熊本空港は、昨年民営化され熊本国際空港鰍ェ管理しているが、20年度から防災・減災事業により、当事務所が雨水の排水機能強化に向けた排水工改良を検討している。
 本渡瀬戸航路は、八代海の天草諸島と有明海側の本渡港を繋ぐ、島民の生活に欠かせない重要な航路であり、航路の管理と護岸の改良を進めている。
 有明・八代海の海洋環境事業は、2隻の調査観測兼清掃船により流木などの浮遊ゴミの回収、水質・底質調査を行い海域の環境整備を進めている。

――地域建設業者の存続・業界の発展に向けた取り組みは
 事業推進と災害復旧に必要不可欠な存在、大切なパートナーだ。港湾工事と災害復旧には作業船が重要で、起重機船やグラブ浚渫船等はほぼ地元企業が保有しているが、作業船の減少が続き、作業船の保有・維持が課題となっている。
港湾工事では作業当日の時化で作業出来ないことが多々あるため、荒天日に発生する作業船の拘束費用を補完する「荒天リスク精算型工事」に取り組んでいる。
更に、作業船の乗組員には24年度から改正基準法による労働時間の上限規制が適用される。厳しい気象海象の条件下で働く乗組員の疲労回復を図るためには、十分で良質な睡眠と休息時間の確保が求められることから、4週8休に向け、休日は陸上でのホテル泊を基本とする検討を進めている。
私は、熊本県出身で高校卒業まで熊本で育った。郷里のため、ポテンシャルを活かし、今後も魅力のある安全で安心な地域とすべく、防災・減災、国土強靱化の整備を重点かつ集中的に実施していくとともに、生産性向上や働き方改革の取り組みを進め、効率的に事業を推進したい。

◇  ◇  ◇
【略歴】島村辰一(しまむら・たつかず)。熊本県立熊本農業高等学校卒業後、1983(昭和58)年旧運輸省に入省。国土技術政策総合研究所管理調整部専門官、九州地方整備局港湾空港部港湾事業企画課課長補佐、同港湾事業企画課長を努めた。熊本県出身。1964(昭和39)年生まれ。
2021.8.2掲載

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