国土交通省阿蘇砂防事務所所長
吉田 桂治氏
直轄砂防をリードする存在に

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 国土交通省阿蘇砂防事務所が4月1日付で設置された。阿蘇地域は2012年7月熊本広域大水害、16年4月熊本地震など、甚大な土砂災害が頻発している。18年度には国直轄による阿蘇カルデラ内の抜本的な土砂災害対策に着手。事業化から3年が経ち、初めての砂防堰堤が完成するなど、着実に整備は進んでいるが、土砂害対策をより強力に推進するため、熊本復興事務所から独立する形で、新組織を立ち上げた。



――目指すべき事務所像を教えてください
 今年3月に閉所した雲仙復興事務所は、現場のニーズから無人化施工を発展させている。日本の砂防技術のみならず土木技術の大きなレガシーとなったと思う。当事務所も九州の直轄砂防事業をリードできるよう、現場のニーズを汲み上げ、解決を図っていきたい。
 また、災害が多発する阿蘇地域の安全・安心を確保するため、しっかりと事業に取り組んでいく。

――砂防事業の取り組み状況は
 27年度を目標に約150億円の事業費で、25施設程度の砂防施設を整備する。今年度は約28億円(20年度3次補正含む)の事業費で、継続工事や新規工事を進め、測量、設計、用地買収箇所を合わせると16カ所で事業を実施する。
 今年3月には、阿蘇市産ノ小屋地区で整備を進めていた四ツ江川堰堤が初めて完成し、15日に完成報告会を開くことができた。

――前職の本省砂防部保全課では、どのような業務を
 直轄砂防事業の予算や新技術関係を担当していた。昨年の7月豪雨では、TEC―FORCEが各分野で熊本県内に派遣され、その中で土砂災害発生状況を調査するための砂防班を担当した。球磨村等の被災状況を本省幹部や首相官邸に報告するための資料作成等に奔走していた。
 また、コロナ禍でDX(デジタル・トランスフォーメーション)の推進が急務とされ、砂防分野へのDX推進を図っていた。

――地域業者へのメッセージを
 6年前、静岡県の富士砂防事務所長を務めた際、地元建設業者と担い手の確保に向けた活動を行った。現場見学会に加え、女性が働きやすい職場環境の改善を目指し、官民を超えた「女子会」を開くことができた。熊本でも引き続き担い手確保に繋がる活動に取り組んでいきたい。
 土砂災害発生のメカニズムや対策は、様々な分野を横断した知見や人脈を基にすることが多い。常にアンテナを高くし、技術や関係者を繋げていくことができればと思っている。

  ◇  ◇  ◇
【略歴】吉田桂治(よしだ・けいじ)。北海道大学大学院修了後、1997(平成9)年入省。九州地方整備局河川部建設専門官、中部地方整備局富士砂防事務所長などを経て、20(令和2)年から本省砂防部保全課土砂・洪水氾濫対策官を務めた。岩手県出身。1972(昭和47)年生まれ。
2021.6.21掲載

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