熊本県土木部長に就任
村上義幸氏
県民に安心感与える事業を
「守り手、パートナー」として業界と意見交換

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 熊本県土木部長に4月就任した村上義幸氏は、西日本建設新聞社のインタビューに応じ、新型コロナウイルスの感染症対策とともに、熊本地震と令和2年7月豪雨災害からの一日も早い復旧復興に全力で取り組む姿勢を示した。国の「防災・減災、国土強靱化のための5か年加速化対策」が始まったことについて「予算が確保できる時代になった」と話し、「今のうちに基礎を固め、県民に安心感を与える事業を着実に展開していきたい」と力を込める。災害対応に追われ人材の確保・育成に腐心している建設産業界には「地域の守り手として、私たちのパートナーとして率直に意見を交わしたい」と呼び掛ける。



―就任にあたっての抱負を
 新型コロナウイルスの感染症対策とともに、熊本地震と令和2年7月豪雨災害からの1日も早い復旧復興に全力で取り組む。蒲島郁夫県知事は「誰一人取り残さない」と決意されている。被災者、県民、次の世代のため、全力で取り組むことが安全安心の確保、熊本の50年先100年先の夢のある発展に繋がっていくのではないか。それらを実現するため土木部長として燃え尽きるまで頑張る。

―熊本県では「新しいくまもと創造に向けた基本方針」を3月に策定されました
 コロナ感染症を乗り越え、地震と豪雨からの創造的復興を成し遂げていくことを基本理念に、四つの基本方針を示した。
 「豪雨からの創造的復興」という点では、被災者・被災地域の1日も早い復旧復興に向け、国道219号をはじめとする県南地域道路の通行止め解消や、被災した公共土木施設の早期復旧などに取り組む。
 二つ目の「熊本地震からの創造的復興」では、益城町の土地区画整理と4車線化を進める。区画整理は約6割の仮換地指定を済ませ、31区画の引き渡しを終えた。少しずつ見えてきた新しい街並みを実感してもらい事業を加速化していきたい。4車線化については、熊本市側約1・6`を2023年度末までに供用させるという目標を示した。地元の協力も必要なので、しっかりと寄り添いながら進めていく。
 三つ目は、「将来に向けた地方創生の取り組み」に、「若者の地元定着と人材育成」という施策を盛り込んだ。土木部としては建設産業の人材確保・育成とイメージアップにしっかりと取り組まなければならない。もう一つが「魅力ある地域づくり」。これは私たちにとって夢のある魅力ある仕事で、特に熊本都市圏の交通渋滞解消に向け、国・県・熊本市、経済界、学識者を交え、2年前から熊本市を中心とした新たな道路ネットワークの議論を始めている。熊本市中心部から高速道路インターチェンジまで約10分、中心部から熊本空港まで約20分で行ける道路ができないかという全体的なイメージを公表したところ。課題は多いが、関係機関とともに議論を深めていきたい。

―防災・減災、国土強靱化のための5か年加速化対策がスタートしました
 本県は4年毎に大きな災害が発生しており、災害に強い熊本にしたい。県の強靱化地域計画に盛り込み、効率的に予算を投入していくかたちになる。国の20年度3次補正で5カ年15兆円の一部が予算化され、県としても2月議会で5カ年の初回分170億円を予算化しており、しっかりと国土強靱化のために使っていきたい。
 今は、このように予算が確保できる時代になってきたので、今のうちにしっかりと基礎を固め、県民に安心感を与える事業を着実に展開していきたい。
 橋梁などいろいろな構造物も老朽化しているし、加速化対策では道路のダブルネットワーク等にも予算が使えるので、いろいろな形で目に見える事業を形にすることができるのではないか。
 災害復旧への対応もあり、私たちも業界も厳しい中で進めていかなければならないが、次の世代のためにやっていかなければならないことだと思っているので、一緒になって取り組んでいただきたい。

―7月豪雨からの復旧・復興に向けた今後の具体的な取り組みは
 ロードマップでは、3カ年で進める10項目と、中長期的に取り組む5項目を示した。
 土木部関係は項目も多く、河川の堆積土砂の撤去や壊れた護岸の修復、堤防の修復強化、治山・砂防、山の再生など継続的に進めていく。住まいの再建に向けては災害公営住宅整備や集落再生に対する市町村の支援など。道路の復旧復興は、国と市町村と連携し、進めていかなければならない。緑の流域治水に関しては、基本的には球磨川流域復興局がいろいろな取り組みを網羅的にまとめた。
 これらの復旧復興プランや流域治水をどう進めていくかということで、まず、今年度の組織改正と4月1日の定期人事異動で、道路・河川・砂防等の災害復旧事業を進めるために芦北と球磨地域振興局の土木部に工務第二課を新設した。また、他県からの応援や任期付職員等も新たに加えて、しっかりと頑張っていける体制を作ったところ。
 緑の流域治水は、市房ダム再開発や治水対策が重要な取り組みとなるため、実現に向け、本庁河川課内に流域対策班を新設した。組織体制を強化しながら立ち向かっていきたい。

―第3次熊本県建設産業振興プランの進捗は
 「人材の確保・育成」が今最も建設産業界に求められることではないだろうか。今回の災害では、県南だけではなく、県北や阿蘇、天草地域の被害も酷く、県央では地震からの復旧復興事業も続いている。建設業界は全県的な人手不足に陥っている。プランの期間に限らず、地道に継続して人材の確保育成に努めていく。
 キャリアップシステムについては、理解を深めて貰う意味で業界と意見交換している段階だ。県としては、技能者の経験や知識の蓄積等を含めて評価や処遇改善、ひいては人材の確保と育成にも繋がっていくという意味では、しっかりと取り組んでいくものだと思う。
 ただ今は災害対応等で手が回らない状況にあるので、意見交換しながら徐々に普及できていければと思う。地域建設業が取り組むには難しい課題もある。
 キャリアップシステム導入による評価や加点、モデル工事など具体的に取り組むのはまだ早い。まずは理解を深めることから始めていく。

―県内建設産業界へのメッセージをお願いします
熊本地震と7月豪雨災害では、発災直後から現場に駆け付け、道路・河川の応急復旧や土砂の撤去、瓦礫処理といろいろな面で昼夜を問わず対応して頂いた。まずは深く感謝したい。インフラの整備・維持管理を含め、地域の守り手としての重要性と役割がますます高まっており、率直に意見を交わしていきたい。
 労働災害は後を絶たず、事故があると企業の力を削がれ、業界全体で危険なイメージを持たれてしまう。ICTやAI、ドローンといった安全な施工に向けた技術研鑽にも業界の皆さんと一緒に取り組んでいきたい。
 今は、災害からの復旧復興や緑の流域治水を進めるとともに、広域道路ネットワークなど夢のある仕事について、検討したり計画を深めたりしている時期だ。これらの予算をしっかりと確保していくのが私たちの仕事なので、しっかりと支えていただけるようなパートナーであってほしい。

(むらかみ・よしゆき)
1962年1月26日生まれ、熊本市在住、85年熊本大学工学部環境建設工学科(土木コース)卒業
略歴=1985年熊本県採用、2015年河川港湾局河川課長、
17年県央広域本部上益城地域振興局長、19年道路都市局長、
21年土木部長。
2021.5.13掲載

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