熊本県議会議員
大平 雄一氏
県議会で防災井戸の重要性訴え

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 熊本地震から3年半。インフラの復旧・復興が進み、各自治体では次の大規模災害への備えが喫緊の課題になっている。先月の県議会一般質問で上益城郡選出の大平雄一議員は、震災の経験から「飲み水だけでなく、生活用水の確保が重要」と話し、避難所などへの防災井戸の整備促進と、設置主体となる自治体への働きかけを県に求めた。なぜ防災井戸が必要なのか、大平議員に聞いた。




―なぜ防災井戸を普及させようと思ったのか
 阪神淡路大震災以降、飲み水ではなく、生活用水の不足で多数の被災者が亡くなっていると聞き、災害時の生活用水確保の重要性を知った。ご存知のように熊本は世界でも有数の地下水都市。この地の利を防災に役立てられないかと考え、停電時にも強い手動式の防災井戸の普及を考えた

―防災井戸は生活用水の確保用なのか
 災害時に重要なのは生活用水だ。成人一人当たりに必要な飲料水は一日3gで、さらにトイレ、風呂、食事の後片付け等に使用する生活用水は329gといわれている。飲料水は自衛隊や自治体などが提供するが、大量に必要な生活用水は自分達で確保する以外、手段がない。生活用水の不足でトイレが汚れ、水分や食事を摂らなくなった被災者が命を落とすケースもあっている

―プールや河川の水は利用できないのか
 プールの水は、余震による転落の可能性が非常に高く、2次的被害者を生み出しかねない。それに、一般的なプールの貯水量は36万gなので2日程度しかもたない。河川水は、「誰がポンプを設置するのか」「避難所までホースを延長できるのか」など、いろんな課題がある

―災害時に井戸を無償提供する民間との協定についてはどう考えるか
 非常に有効な手段だが、盲点もある。一般的な井戸は、ほとんどが電気を利用した水中ポンプなので、災害と停電が常に同時に起こることを考えると非常に厳しい。熊本地震では、井戸水を善意で開放した方の自宅に勝手に上り込んだり、不審な車がうろつくので提供をやめたりという話も聞いた。こういったことを避けるためにも、公共の場に誰もが使用できる防災井戸を確保する必要がある

―なぜ手動式なのか
 一見不便に思えるが、防災という観点からすると大変優れたシステム。一番は老若男女誰でも簡単に取水できる。千葉県の台風による断水でも問題になったように、非常用発電機を使うとなれば限られた者しかセットできないし、更に「燃料の確保」「長時間運転による故障」「発電機自体の盗難」など、多くの問題がある。県内には以前から甲佐町4カ所、熊本市東区1カ所に防災井戸が設置してあったが、熊本地震の揺れに耐え、1カ所も損壊することなく水を提供している

―手押し式との違いは
 昔の手押し式は気圧の問題で地下水位7bが汲み揚げの限界だった。近年の防災井戸はポンプに特殊なシリンダーを使用しているため、地下50bから汲み揚げることができる。呼び水も必要ない。ステンレス製なので腐食にも強く、メンテ費用もほとんどかからないそうだ。

―今後の防災の取り組みについて
 地震・台風・水害・寒波と、断水を引き起こす災害が全国で頻発している。電気や食料の確保ももちろん大切だが、何よりも大切なのは生活用水の確保と考える。熊本地震を教訓に、後世に防災の教えと施設を残すことが、震災を経験した世代の責務だと考える。
2019.10.21掲載

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