熊本県建設業協会
会長 土井 建氏
「事業の必要性」発注者に提案

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 熊本県建設業協会の新会長に土井建氏が就任した。地震からの復旧・復興工事が最盛期を迎える中にあって、働き方改革や生産性向上など、収束後を見据えた難しい舵取りが求められている。西日本建設新聞社のインタビューに応じた土井氏は、会員の意見を聞きながら協会運営にあたっていく姿勢を示すとともに、提案型による防災・減災事業の掘り起こしを模索する。



――協会運営にあたっての抱負を
 八代支部の支部長を4期8年務め支部運営については理解しているが、本協会では副会長の経験も無い。協会幹部には経験豊富な方が多いので、まずは皆さんの意見を聞き、勉強しながら頑張っていく。
 協会として先ず全力で取り組むのは災害からの復旧・復興だ。建設業者としての立場もあるが、被災者のことを考え、被災者の目線に立って復旧事業に携わらないといけない。「一日でも早く」の一言に尽きるだろう。

――復旧・復興工事の現状と課題は
 発災直後は、協力したくても遠方からだと単価等で無理な状態だったが、発注者には人件費や経費などいろんな面で業界の実状を考慮してもらい、不調・不落の減少に繋げることができた。官民が一体となって取り組んだ成果だと実感している。現在も、各社、復旧・復興工事に全力を尽くして頂いている状況にある。課題が発生した場合には、引き続き協会として対処していく。

――収束後を見据えた対応は
 熊本県内は、インフラ整備がまだまだ不足している。協会としてインフラ整備の必要性を訴えていく。
 また、防災・減災の観点からみて、整備が必要な個所は多い。熊本地震で被害は受けなかったものの、危険な場所も多かった。我々は地震の経験を生かし、技術者の立場から、災害・被害を未然に防ぐまちづくりを提案していくべきだ。危険個所を我々が事前に調査し、事業の必要性を発注者に提案して、工事に結びつけていきたい。この取り組みは、これまでも幾つかの支部で実施していたし、他協会では県内の何千カ所を拾い上げて発注者に提出している。担当委員会の協力を求め、協会として全県的に取り組んでみたい。

――週休2日など働き方改革に向けた取り組みは
 熊本は震災からの復旧・復興に全力で取り組んでおり、他県のように取り組みを進める状況にないが、必要性は感じている。
 現場の稼働日数が6日から5日になれば、稼働率は6分の5に低下するということ。現場事務所もトイレも重機も殆どが月払いのリース契約なので、その分が負担になる。専門業者や生コン業者、資材業者も一斉に休まないといけなくなる。
 弊社で以前、週休2日を実施した際、日給の作業員から「この現場が休みなら別の現場をやらせてくれ」と言われ、断れなかった。国、県、市町村、全ての発注者が一斉に実施しないと、掛け声だけでは難しいだろう。
 建設業界が物凄く余裕がある業界ならいいが、各社とも一杯一杯の状態で経営している。今の従業員の給料をいかに高くできるかを考えている中で、労働環境を改善して賃金が下がってしまったらダメだ。「賃金を引き上げながら労働環境を改善する」この両立は業者の力だけでは難しい。担い手の確保・育成も同じ。建設業界がもっと魅力ある業界となれば担い手も集まるだろうが。

――外国人の活用については
 人口減少の局面を迎え、将来必要とされる技術者・技能者の確保が厳しさを増す中、外国人の活用は、致し方ない部分もある。賃金は日本人の若者と同じくらいだが、彼らは一生懸命に頑張ってくれるし役に立っていることも認識している。
 しかしながら、制度上将来に亘る、技術・技能の承継問題を解決出来るものではなく、また、弊害が無いわけではない。国内には、まだまだ潜在労働力が有ると言われている。本来なら現場で働く人たちの賃金を上げるべき。他産業に比べて魅力ある建設産業となることが必要。難しい課題だ。

――生産性向上に向けた取り組みは
 i―Constructionは確かにいいことだと思う。ただ、現状では業界のメリットは少ないだろう。週休2日と同じで、発注者には業界の努力に見合うだけの配慮をお願いしたい。生産性向上は、人口減少に伴う労働力減少への対応が根本にある。また、今後、工事量は間違いなく減少する。受注環境を整えたうえで、将来の担い手確保・育成のための適正利潤確保を謳う、改正品確法の順守、運用指針適正運用の徹底を、発注機関に求めていきたい。

――協会員へのメッセージを
 就任したばかりで分からないこともあるが、協会を良くするため一生懸命に努めていくので、会員の皆様のご協力をお願いしたい。
2018.6.11掲載

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