障害者雇用保障は社会的責任
「トライアル雇用」の活用を
 熊本県障害者雇用支援センター 竹本信次所長



熊本県障害者雇用支援センター・竹本信次所長

 民間企業に対しては、常用労働者数の1・8%以上(法定雇用率)の障害者雇用を義務づけ―。この「障害者の雇用の促進等に関する法律」に基づき、熊本労働局が平成18年6月1日現在で調査した県内の障害者雇用状況によると、民間企業(56人以上規模の企業)の実雇用率は、前年比0・02%増の1・84%と着実な進展が見えるとの結果が出た。
 しかし、産業別にみると、12の業種のうち法定雇用率を上回ったのは医療・福祉、サービス業など4業種のみ。建設業においては、前年比0・12%減の1・14%と下位から3番目で、引き続き改善が望まれている。
 この状況について、熊本障害者雇用支援センターの竹本信次所長は「障害者の能力を正当に評価し、雇用の場を保障することはすべての企業の社会的責任」と訴え、障害者雇用への理解を呼びかけている。センターの概要や建設業の障害者雇用状況などを聞いた。

――センターの概要は
 「養護学校を卒業したが今すぐ就職するのは不安」「就職した経験はないが一般企業で働きたい」などの思いを抱える障害者に対して、就職・職場定着に至るまでの職業準備訓練、職場実習、相談などをハローワークと連携して実施している。全国に14カ所、九州では、熊本、福岡、宮崎にセンターがある。
――具体的な訓練・支援内容は
 職場での基本的なルール・マナーや、適切な対人態度などを身につけるための基礎訓練を行い、この結果、基本的な労働習慣を習得しつつある者に対しては、実際の事業所での職場実習を行っている。
 また、就職後は、定期的に企業へ訪問し卒業生をフォローアップ。障害者にとって働き続けることは難しく、障害の特性によっては、作業環境の変化などで不適を起こす場合があることから、再度、仕事へのモチベーションをあげてもらうためにも、指導員が直接出向いる。
――熊本労働局の調査では、建設業の障害者雇用率は依然低いとの結果が出たが、県内の求人状況は
 建設業からの求人はほとんどない状態。建設業は専門的な知識を必要とする仕事内容が多く、さらに事故や危険性の回避など安全面の配慮が特に必要とされる点が、雇用を困難にしていると考えられる。しかし、障害者雇用は企業の社会的責任で、企業自らが、仕事場を創り出さなければ何も変わらない。
 他県では、障害者雇用に乗り出している建設業も数多くある。ある土木建設業者は、発注者の了解を得て建設現場での雇用を試みており、事務所のゴミ出し、清掃、職員作業服の洗濯、花壇整備など雇用の創出に務めている。また、別の会社は、知的障害者を雇い、15年間の指導後、現在は、建築物の基礎工事から棟上げまで担当するようになったという。
 これら会社は共通して「会社トップの理解」「会社全体でのバックアップが必要」と述べている。
――雇用を検討している企業にアドバイスを
 障害者雇用の取り組みが遅れている企業では、障害者に合った職域開発、雇用管理等のノウハウがなく、意欲があっても躊躇するのが現実だ。
 厚生労働省はこのほど、知的障害者の社会進出を助ける「チャレンジ雇用」の導入を決めており、これは、各府省・各自治体が期間限定で採用し、業務能力がついたと見なされれば、ハローワークを通じて就職先企業を探す仕組み。いわば仕事能力が保証された形になるので、雇用の実績のない企業も受け入れやすくなる。
 また、今すぐにでも試みたい企業は、同じように短期試行雇用する「トライアル雇用」制度があるので積極的に活用し、本採用のきっかけをつくってほしい。
 企業が障害者雇用に取り組むことは、コンプライアンスの理念からも重要なこと。自社の仕事内容と障害者を照らし合わせて、周辺作業など出来る仕事を少しでも見つけていく体制づくりをお願いしたい。
 同センターの問い合わせは、電話096・242・1681。
2007.06.11掲載

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