「鋼板が無く開店休業状態も」
熊本県板金工業組合 石ア禎一代表理事


 全国的な鋼板不足が続くなか、熊本県内の板金工事業者の現状や今後の施策などを、約200社で組織する熊本県板金工業組合の石ア禎一代表理事に聞いた


−鋼板が足りない要因は

 自動車、家電、造船の生産量増加や、中国の需要拡大もだが、最大の要因は、10個の台風が日本に上陸し、北海道から沖縄まで全都道府県に被害をもたらしたこと。北海道の住宅の屋根はほぼ100%が鉄板。そこに台風が来て6,000トンぐらいの鋼板が必要となった。新潟地震もあったし、復旧工事がこれから全国的にはじまる。もともとメーカーは新築需要で生産しているので、災害分がまったく足りない。

−組合員各社の現状は
 需要はあるが、鋼板が無ければ仕事が出来ないのだから、従業員を遊ばせざるをえない状態。開店休業になる可能性も考えられる。地元の中小ゼネコンや発注官庁担当者の中には、「どこかには鋼板があるだろう」という位にしか捉えていないところもあるのか、この窮状をなかなか理解してもらえない。今オーダーして納期は3カ月後。これが来年も続くと思われる。素材製品の価格も40〜60%上昇。来春には再値上げも予想されるが、元請けへの価格転嫁は難しく、上昇分を労務費でまかなっている。

−こういう危機的状況は今までにあったのか
 バブル後も台風被害の復旧や国体での建設ラッシュで熊本県は比較的潤っていた。その後、公共事業費の抑制で仕事の取り合いが始まり、値段が下がり続けているところにこの危機的状態が。オイルショックの時も値上げ・品不足があったが、あの時は在庫を放出せず値段をつり上げる思惑もあったとか。今回は、メーカーも商社も中間卸業者も本当に在庫がゼロで、どこにも品物が無い状態。どうにも出来ない。

−国外から鋼材を調達することはできないのか
 中国には高炉が30数社あるが材質・性能が劣るため薄板が出来ない。国内の高炉では厳選したコークスを使用するので品質が全く違う。また薄板を加工する技術に関しては日本が世界一の技術を持っている。でも、この状況が続けば、国外の粗悪品が出回る可能性も。

−鋼板に代わる建築資材は
 鋼板へのメッキ・塗装の技術が格段に進歩したので30年は腐食しない。そのうえ高強度・軽量で躯体に負担がかからず、かつ価格が安いという優れた資材だ。最近では建物への鋼板の使用量が増え続けており、鋼板に勝る資材は無いのでは。

−打開策は
 九州板金工業組合でも、この状態を重く受け止め、鉄鋼メーカーと流通商社あわせ15社に呼びかけ、材料不足の原因と供給状況について懇談した。メーカーと商社、我々が一同に介したのは今回が初めて。鋼板供給がショートしないようメーカーにお願いをしたところだ。

−メーカー側の対応はどのように
 鉄鉱石、石炭・石油、運搬コストの値上がりでどうしようもできないとのこと。来年はさらに鉄鉱石と石炭の値段が上がり、建築用鋼材の値段が上がることが予想されている。これは全世界の状況らしい。

−ゼネコンや発注官公庁の理解も必要なのでは
 まずは需要に対応出来ない現状を知って頂きたい。工期を延長してもらうというよりも、現状を見越して工期に余裕を持たせた早め早めの発注をお願いしたい。また来年度工事で既に設計中のものもあり、施工時には当然単価に差が出てくる。工賃も20〜30%アップが避けられないので、これらを考慮して頂ければ非常に有難い。

−組合として今後、どういった施策を
 一人親方の会社は比較的耐えられるが、従業員を抱えている企業は経営が大変だ。零細企業で立場が非常に弱く、全組合員が困っている状況。こういう状況でもメーカーや商社はそれなりの利益を出しているのに、弱い立場の我々はメーカーとゼネコンとの板挟みにあって苦しんでいる。組合員が熊本県内で約200社、九州全体で1,150社あるわけで、九州の声を『ひとつ』にしてこの窮状を訴えていきたい。
2004.12.13掲載

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