直轄道路維持管理に新施策展開
〜道路利用者の意見をハード整備に反映〜 
平成18年2月13日新聞掲載
 国土交通省熊本河川国道事務所が直轄道路の維持管理にこれまでにない施策を展開し、本腰を入れている。17年4月には「直轄国道の今後の維持管理と利用者の利便性向上を考える懇談会」を立ち上げ、同10月、道路利用者の立場からの提言≠取りまとめた。この提言を受け、11月に道路利用者などから維持管理に対する意見をハード施策に反映させることを目的とした「よかみちプロジェクト」を始動。九州初の試みとして注目を集めた。熊本から始まる新たな道路管理。変わっていく道路行政を探ってみた。
 公共事業関係予算が減少する中で、直轄道路の維持管理予算は年々減少。熊本河川国道事務所の維持管理費では、平成12年度の3631百万円をピークに、平成17年度には2373百万円と約6割に減少している。平成18年度についても公共事業関係予算について3%減という政府の方針が示されており、維持管理予算も減少することが予想されている。
 一方で熊本県内の道路ストックについて過去30年間の推移をみると、直轄国道の延長はほとんど変化がないものの、橋梁の延長については昭和52年に4818bであったものが、平成17年には11580bと2・4倍に、トンネル延長についても3090bあったものが7164bと2・3倍にそれぞれ増加している。
 これらの橋梁、トンネルなどの重要構造物は、1960年代の経済成長期に数多く建設されたものがほどんどで、着実に老朽化が進行中。橋梁でみると、完成後の平均経過年数は、現在34年となっており、16年後には50年が経過する。これにより橋梁の機能維持に要する費用の増大が見込まれている。
 かつて1980年代のアメリカでは、1930年代のニューディール政策により、大量に建設された道路構造物の老朽化に対応できず、「荒廃するアメリカ」と呼ばれる道路ストックの荒廃を招いた。その状況を上回るペースで熊本県内の橋梁、トンネルなどの重要構造物の老朽化が急速に進んでいるという。
 道路の維持管理は、僅かな増減で一定の予算額があると、前年度と同程度で行うことが可能であるが、予算が大きく減少する中で、課題の解消に長期間を要しているのが現状だ。さらに、情報発信や道路利用者からの意見が反映する道づくりの仕組みが確立しておらず、道路利用者らの満足度を向上させる維持管理システムが不在となっている。
 道路利用者や沿線住民と協同で管理する仕組みを作ることも道路維持に欠かせないことの一つ。現在、県内の直轄国道では、10団体25`のVSPが活動を行っており、この活動の周知を図り、十分に機能させていくことが必要となっている。
 *VSP=ボランティアサポートプログラムの略称で、自分が住んでいるところの道路をきれいにしたいという人々の道路美化活動を支援する団体
 
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
懇談会提言で道路管理のあり方示す 
 熊本河川国道事務所は昨年4月、「直轄国道の今後の維持管理と利用者の利便性向上を考える懇談会」(座長・溝上章志熊本大学工学部教授)を発足させた。直轄道路の維持管理に関わる課題の解消を目的としたもので、昨年11月の会合で、懇談会意見として『熊本県内の直轄国道の今後の維持管理に関する提言』をまとめた。
 この提言では@計画的な維持管理Aコスト縮減B道路利用者等の満足度を向上させる取り組みの充実C沿道住民と道路管理者の協同の推進D道路特定財源制度の維持―の5つを具体的な施策内容として実施していくことを示した。
 これを受け熊本河川国道事務所では、直轄国道の維持管理の改革を目指した「よかみちプロジェクト」を始動。コミュニケーション型維持管理システムを構築した。
 具体的には、道路利用者からの意見・要望・提案を維持管理に反映させるため、九州初となる「くまもと・国道ご意見番」を設置し、募集チラシで意見等の収集を行っている。また、ホームページに「よかみちプロジェクト」コーナーを開設し、情報発信に努めている。
  【懇談会提言の内容】
@ 計画的な維持管理 
 将来継続して維持管理を行っていくうえで、適切な直轄管理区間を設定する。また、九州で先駆けて「優先順位をつけた道路利用者に分かり易い維持管理の実施計画」を今年度策定した。
A コスト縮減
 計画段階で適切な管理区間の設定や実施計画を策定する。また工事や維持管理の実施段階で新技術を積極的に取り入れ、総合コストの縮減に今後も取り組んでいく。
B 道路利用者等の満足度を向上させる取り組みの充実
 維持管理の実施計画や沿道住民が維持管理に参画する仕組み、道路利用者が望んでいる災害規制情報、路上工事情報、冬季降雪状況などの情報発信を今年度から積極的に行いつつ、道路利用者からの苦情も受けつけ、集計・分析を行いながら来年度の実施計画に有効活用する。
 また「くまもと・国道ご意見番(仮称)」を設置する。
 「くまもと・国道ご意見番」には、維持管理の満足度を評価してもらい、その成果を次年度の維持管理実施計画に生かす。
C 沿道住民と道路管理者の協同の推進
 今年度から、道守・くまもと会議と連携してVSPの積極的な周知を行い、個人でも簡易に支援を受けられる仕組みを提案する。
 またこの仕組みにより道守・くまもと会議の会員が熊本県内の直轄国道で景観に優れた道路環境づくりを行う道守花壇(仮称)を展開する。
D 道路特定財源制度の維持
 現在、そしてこれからの道路ネットワークを維持するため、直轄国道の維持管理の財源となっている道路特定財源制度の必要性を、今後熊本から発信していく。
 ※これら提言の実施については、時期や状況を考慮して懇談会への報告を考えている。
 ※「くまもと・国道ご意見番(仮称)」とは・・・維持管理の利用者満足度を把握するため、また道路管理者が積極的に意見を聞くために一般公募により募集する。
協同での管理積極的に! 利用者とのコミュニケーション大切
国土交通省熊本河川国道事務所・安藤 淳所長に聞く
 「道路利用者と協同の道づくり」。よかみちプロジェクトを始動した背景には、これまでなかったコミュニケーション型道路維持管理というシステムを構築する必要があった。本省道路局から熊本河川国道事務所に2年前赴任。独自の視点で道路管理の仕組みを刷新してきた安藤所長に今後の展開などを聞いてみた。
 ――道路管理に対する意気込みは
 道路管理は、改築と違って形にならないので目には見えにくい。何をやっているかもわからない人が多いのでは。管理について知ってもらう、興味を持ってもらうことが出発点だ。
 ――理想的な道路管理システムについての考え方を
 道路利用者の立場に立つ、使う人の目線で見ることにより、理想的な道路管理が生まれるのではないか。利用者の反応をつかみ、それを実施計画に反映させる。そのためには情報発信し、意見、要望、提案をいただく。道路管理者と利用者が上手く、コミュニケーションをつくっていく仕組みを作り上げることが大切なことだと思っている。
 ――これまでの管理で反省点があると
 一方的な維持管理に問題がある。これまでは道路管理者の判断で維持管理を行ってきた。予算も減少している中、効率的で効果的な維持管理が求められている。みんなに納得してもらえるような予算の使い方が必要になっている。
 ――よかみちプロジェクトの狙いは
 いくつか狙いはあるが最大のテーマは協同の推進だろう。道路は地域づくりの骨格を担っていると言っても過言ではない。我々が管理できるのは必要最小限度。道路はその地域の顔であると捉えるならば、良い景観を作っていくことが重要となってくる。愛着がもてる道づくりをするため花を植える、手入れをする、といった形で道路管理に携わる。こうした協同での管理を積極的に進めていきたい。
 ――そのためにはVSP(ボランティアサポートプログラム)の活動が重要になってくると思うが
 現在、11の団体にVSPとして活動していただいている。ボランティアへの参加は多くの人たちが意欲的だが、なかなか参加できる機会を見いだせないのが現状だ。我々がそのきっかけづくりを行うことで、多くの民間組織と連携したいと思っている。先ずは昨年組織された「道守・くまもと会議」と連携し、『道守花壇』を展開していきたい。VSPの周知や歩道に色とりどりの花を咲かせることで成果を上げたい。
 ――道づくりの一翼を担う建設業には
 様々な団体や協会が主体となって行っている道路清掃などのボランティア活動には頭が下がる想い。そうした取り組みは、非常に良いこと。業界が率先して行うことで、色んな人たちに波及してもらいたいと思っている。 

[目次]