@流通量の確保が熊本県経済の活性化への近道               平成17年2月21日新聞掲載
−飛躍転換の時期を迎える八代港
 年明けの1月9日、熊本日々新聞の朝刊に興味深い記事が掲載されていた。「八代を活かす大規模装置」という見出しで、交通、産業、環境などの分野で代表される新幹線や農業、球磨川河口の渡り鳥生息地などの大規模装置を掲げ、その利活用や付加価値を高める手法拡大によって、それぞれの歯車を、いかにうまく回すかが八代にとって試される年になるだろうとの内容である。また、「企業トップは今年を刷新・攻撃の年と位置付ける。そのためにも今年、大規模装置を活かさない手はない」と結んでいる。

 なかでも、最も共感したのが「県内貿易を支える八代港の利活用も課題だ。アジアとの自由貿易協定の締結ムードが高まりつつあるなか、中国などとの新規航路開拓の可能性は大きく時間をかけずに積極的な展開が欲しいところだ」といった記者のコメントである。

 業務の関係から八代港の動向や今後の展望などを検討・議論する機会が多く、八代港の優位性や経済波及効果の潜在能力の高さなどについては、相応の分析をしていたつもりであるが、大規模装置の一つとして八代港を位置づけた記者の判断は、日頃からの探求と洞察力の高さが基になっているに違いない。

 筆者も同様の認識であり、八代港が熊本県の景気浮揚を握る転換期を迎える時期にあり、また、そのための利活用のあり方や施設整備の必要性を痛切に感じているものの、「港湾」のイメージが市民感覚とほど遠く、大規模公共工事の代名詞と見られがちな、もどかしさを常日頃から感じている。そのため、港湾整備の必要性を理解して頂くことに限界を感じることも少なくない。今回、本紙より執筆依頼の機会を得たため、八代港がいかに地域の振興や経済に貢献するかについての一部を紹介してみたい。
−大型企業の集積と地理的優位性は八代港特有の強み
 景気低迷や深刻な雇用不足などに対応して、経済浮揚を画策する議論が多方面・立場で展開されているにもかかわらず、明るい兆しを誘引する突破口が見つからない状況は、地域のみならず全国レベルの課題となっている。

 しかしながら、八代港においては昨年からの企業進出決定や流通企業の設備投資が行われているなど、厳しい経済情勢に反発するかのような状況にあり、新たな転換期を予測させるかのようにも見受けられる。

 それでは、なぜこのような転換動向が生じているかであるが、八代港へ進出決定した企業は、低廉な原材料を海外から輸入して製品化。その後、九州を主とした消費地へ流通するものと、九州各地から発生するスクラップ(金属類)を集荷後に、海外のリサイクル工場へ輸出するものであり、何れも九州の中心に位置する八代港の地理的優位性に着目したものである。陸送コストの削減による企業競争力の確保によって、自社の増産体制に移行させることを達成しようとするものである。

 また、流通企業においては保管倉庫の新設により、地場に立地する大型企業の生産需要に応じてリアルタイムに製品・資材等の配送や供給を行い、関連企業とともに企業活動の活性化を促すことに活路を見出そうとするものである。

 このような状況は深刻な経済情勢のもと、激化する企業間競争においての活路を八代港をステージとして見出そうとする企業の敏感で切実な判断によるものであり、改めて八代港が大規模装置であることの強みを認識せざるを得ない。

−熊本県の貿易を一手に担う八代港
 八代税関支署の統計資料によると、平成15年の同支署管内(八代港、熊本港、三角港、水俣港、熊本空港)の貿易総額は672億円である。統計対象の事務的な要因もあるが、これが熊本県全体の概ねの貿易総額である。このうち八代港での貿易額は367億円であり、県全体の55%が八代港によって行われていることからも、八代港特有の強み(地理的拠点性と大型企業の集積)が発揮されていることがわかる。


−流通量確保は熊本経済の浮揚の鍵であり港湾の利活用によるインパクトが大きい
 港湾が果たす役割は、企業立地や雇用創出、産業競争力の強化等による経済活動への支援、観光拠点形成などに象徴される地域づくり、安全で公平な生活基盤の形成など広範に及ぶ。

 このなかでも、熊本県経済の浮揚の鍵を握るのが、港湾を生かした流通量の確保である。今回、流通活動の結果が及ぼす地域経済への効果について検討したので一部を紹介してみたい。

 現在の八代港においては概ね、500万トンの貨物が取り扱われている。今後、利活用を促す施設の整備や航路の新たな誘致などの効果によって、コンテナ船で20万トン、一般貨物船で80万トンの総計100万トンの取扱貨物が増加したと仮定した場合の経済波及効果を推算した。紙面の関係上、推算手法の詳細な説明については省略するが、この貨物需要が発生した場合、様々な産業が連関しながら年間で、545億円の県内生産需要が発生し、雇用者数では3510人、税収等の自治体への収入は28億円が生じるという結果を得た。

 国土交通省が平成15年に実施した「コンテナ貨物流動実態調査」によると、熊本県内の企業などがコンテナ貨物を輸出する際、全体の98%が博多港などの県外他港を利用している実態が明らかになっている。この流通実態による熊本県の損失には計り知れない大きさがあることを認識せざるを得ないということである。


熊本県の港湾で100万トンの取扱貨物が
増加した際の経済波及効果

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