平成17年6月30日新聞掲載
熊本労働局 労働基準部安全衛生課・田川 清課長
石綿則新設 石綿含有建築物の解体工事急増
肺がんなど健康障害多発の恐れ


 あす7月1日、建築物解体作業での石綿ばく露による健康障害の防止を主な目的とした『石綿障害予防規則』が施行される。建築物などの解体に際しての作業計画作成や作業主任者の選任、解体作業従事者へ必要な知識を付与するための特別教育−の義務づけなどを盛り込んだもので、厚生労働省が今年2月に制定。現在、石綿は、特定化学物質等障害予防規則(特化則)で規制されているが、他の化学物質とは講ずべき措置の内容が大きく異なることから、新たに特化則から分離し、建築物の解体作業などの際のばく露防止対策を中心として強化することにした。
 石綿は1970年から1990年にかけて年間30万トンが大量輸入。このうち約9割が建材に使用されてきた。これらの時期に建築された建物は、今後、老朽化とともに解体されることとなり、そのピークは2020年から2040年頃と予想されている。肺がん、悪性中皮種等の重篤な健康障害をもたらすものとして、今後、石綿対策に注目が集まりそうだ。
 同規則の監督機関となる熊本労働局の田川清安全衛生課長に制定経緯や概要を聞いた。
−規則制定に至るまでの経緯は
 背景には、石綿の作業に関わった労働者の肺がん、中皮種というような労災認定者数が、平成9年度から15年度の6年間で約6倍(全国)の増加を示したことにある。
 石綿を含有する製品の製造等は、平成7年に有害性の高いアモサイト(茶石綿)およびクロシドライト(青石綿)が、16年10月からは、クリソタイル(白石綿)を含有する製品がそれぞれ禁止され、国内の石綿使用量が大幅に減少した。
 一方、1970年代後半から80年代にかけ大量輸入された石綿の多くは、これまで建材として建築物に使用されており、これら建築物の耐用年数を、木造プレハブが30年、鉄骨系が50年、コンクリート系が70年と仮定すると、その解体時期は、2040年頃にピークを迎えると予想。労災認定件数も増加傾向にあり、早期な対策が求められている。

−現行の特化則からなぜ石綿を独立させたのですか

 特化則はもともと、石綿等の製造取り扱い関係を主な対象とした法規制。建築物の解体等の作業に対する明確な規制は無かった。今後、予想される解体工事の増加に対応するためには、現規則では事業場が講ずべき措置の内容も大きく異なることから、今回、解体等の作業での対策を中心とした単独の規制を制定した。

−新規則は解体工事のみについて適用されるのですか
 解体工事を中心としているが、改修や補修等も含まれる。例えば、吹き付けられた石綿が劣化している場合は、石綿の表面に固化剤を吹き付けることにより、塗膜を形成させる封じ込め作業をする必要があるが、そういった改修工事も該当する。

−違反した場合の罰則は

 規則条文により罰金刑か懲役刑が科せられる。例をあげると、作業の届出。これは、石綿除去作業を工事開始前までに所轄の労働基準監督署に届出を行わなければならないという規則だが、これに違反すると50万円以下の罰金。さらに、事前調査や作業計画などの項目を怠った場合は、6カ月の懲役または50万円以下の罰金がある。

−発注者に対してはどのような措置がありますか

 建築物、工作物の解体、改修等の工事を発注する場合は、直接工事を行う事業者にその労働者への石綿ばく露を防止するための措置を講ずることが必要だ。
 1つ目は情報の提供。工事請負人に対し、当該建築物等における石綿含有建材の使用状況等(設計図書等)を通知するよう努めなければならない。
 2つ目は、工期、経費等の条件。建築物等の解体工事等の注文者は、作業を請け負った事業者が、契約条件等により石綿による健康障害防止のため必要な措置を講ずることができなくなることのないよう、解体方法、費用等について、労働安全衛生法およびこれに基づく命令の遵守を妨げないよう配慮しなくてはならない。

−規則を普及・PRさせるための取り組みは

 熊本労働局としては、県内の国、県、市町村自治体、業界団体等に対し、要請文を通知するとともに、石綿障害予防規則に係るパンフレットを配布し、普及を促しているところ。すでに入札説明会時に業者に対し、パンフレットを配布するなど、規則の周知を図っている市町村もある。
 規則の具体的な内容は、最寄りの労働基準監督署か労働局安全衛生課に問い合わせてほしい。要請があれば、団体単位の勉強会に講師を派遣する。
石綿含有建築物、2020年から2040年頃に解体ピーク
−建築物等の解体等にかかる主な対策
▼事前調査
 (1)事業者は、建築物等の解体等の作業を行う時は、あらかじめ石綿の使用の有無を目視、設計図書等により調査し、その結果を記録しておかなければならない。調査の結果、石綿の使用の有無が明らかとならなかった時は、分析調査し、その結果を記録しておかなければならない。
 ただし、石綿等が吹き付けられていないことが明らかで、石綿が使用されているとみなして対策を講ずる場合、分析調査の必要はない。
 (2)建築物等の解体等の工事の発注者は、工事請負人に対し、当該建築物等における石綿の使用状況等(設計図書等)を通知するよう努めなければならない。
▼作業計画
 事業者は、石綿が使用されている建築物等の解体等を行う時は、あらかじめ次の事項が示された作業計画を定め、当該作業計画により作業を行わなければならない。@作業の方法および順序A石綿粉じんの発散を防止し、または抑制する方法B労働者への石綿粉じんのばく露を防止する方法
▼届出
 (1)耐火建築物または準耐火建築物における吹き付け石綿の除去作業については、工事開始の14日前までに所轄労働基準監督署長に届け出なければならない。
 (2)次の作業については、工事開始前までに所轄労働基準監督署長に届け出なければならない。@石綿含有保温材、石綿含有耐火被覆材、石綿含有断熱材の解体等の作業A(1)以外の吹き付け石綿の除去作業
▼特別教育
 事業者は、石綿が使用されている建築物等の解体等の作業に従事する労働者に次の科目について教育を行わなくてはならない。@石綿等の有害性A石綿等の使用状況B石綿等の粉じんの発散を抑制するための措置C保護具の使用方法Dその他石綿等のばく露の防止に関し必要な事項
▼作業主任者
 事業者は、石綿作業主任者を選任し、次の事項を行わせなければならない。@作業に従事する労働者が石綿粉じんにより汚染され、またはこれらを吸入しないように、作業の方法を決定し、労働者を指揮することA保護具の使用状況を監視すること
▼保護具等
 (1)石綿を含む建材等の解体等をするときは、労働者に呼吸用保護具(防じんマスク)、作業衣または保護衣を使用させなければならない。
 (2)保護具等は、他の衣服から隔離して保管し、廃棄のために容器等に梱包したとき以外は、付着した物を除去した後でなければ作業場外に持ち出してはならない。
▼湿潤化
 石綿を含む建材等の解体等をするときは、それらを湿潤なものとしなければならない。
▼隔離・立入禁止等
 (1)吹き付け石綿の除去を行う時は、当該作業場所をそれ以外の作業場所から隔離しなければならない。
 (2)石綿含有の保温材、耐火被覆材、断熱材の解体等の作業を行う時は、当該作業に従事する労働者以外の者が立ち入ることを禁止し、その旨を表示しなければならない。また、特定元方事業者は、関係請負人への通知、作業の時間帯の調整等必要な措置を講じなければならない。

 (3)その他の石綿を使用した建築物等の解体等の作業においても、関係者以外の者が立ち入ることを禁止し、その旨を表示しなければならない。
▼注文者の配慮
 建築物等の解体工事等の注文者は、作業を請け負った事業者が、契約条件等により必要な措置を講ずることができなくなることのないよう、解体方法、費用等について、法令の規定の遵守を妨げるおそれのある条件を付さないよう配慮しなければならない。

[目次]