C土蔵白壁への愛着からまちづくりへ平成17年4月14日新聞掲載
松合地区街なみ環境整備事業
 平成10年、旧不知火町(現宇城市)の「松合地区街なみ環境整備事業」がスタートした。松合地区に古くから残る土蔵白壁造り建築物の復元に、国と町が3分の2を補助し修復を支援する。計画期間は19年度まで。事業対象地区である本通りでは、約80%が整備を終え、歴史的なたたずまいを見せている。
 このプロジェクトでは、地区住民の土蔵白壁への誇りや愛着が地区への誇りとなり、人の流出を防ぐことで地域の活性化・復興を図る。

・生活の場
 松合地区は、古くから漁業と醸造業で栄え、江戸時代に松合港が完成すると「肥後藩随一の漁港」として繁栄した港町。江戸後期に連続して発生した大火災により多くの家が焼失した歴史がある。延焼を防ぐため、住民達が建てたのが土蔵白壁造りの家だった。現存する土蔵白壁は約70棟。
 地区内では、町並みをまちづくりに活かそうと住民が取り組みを開始。街なみ環境整備事業は、そういった活動を受け補助事業として始まった。
 事業が動き出すまでは、平成6年に設立した「松合の町並み保存会」(本田安正会長)が保存活動を行っていた。「今進めている事業は本通りだけが対象。他区域にも土蔵白壁は残っており、整備区域の拡大を図っていきたい。修復することがまちづくりに繋がるのでは」。本田会長は、計画期間終了後も事業継続を望んでいる。
 保存会では、これまで建物群の実態調査や、先進地への視察研修などを行っている。毎月1回開催する建築相談会も活動の一つ。行政側と建築関係者が加わり、改修を希望する住民に技術面・手続き関係についてアドバイスを行っている。
 建築相談会には、アドバイザーとして高木冨士川計画事務所(熊本市)が事業開始当初から参加。土蔵白壁造りは、開口部が狭いため内部が暗く、通風性・換気性に劣るなど不便な面も。「補助を受けて整備された建物は、15年維持しなければならない。忠実に復元するだけではなく、生活の変化を見通したプランを勧めている」。担当者の宮野桂輔さんは、生活する人の暮らしやすさを考える。


松合地区本通りに建つ整備された土蔵白壁造りの建物


町並み保存会会員でもある前村建設の
前村清氏。施工を多く手掛ける。


・ひとづくり
 昔ながらの木舞竹組みを使った本格的な工法では、工期が1−2年掛かる。現在は、コストや手間・工期の関係で、下地にモルタルを塗る工法がほとんど。「白壁を塗るのは左官職人の仕事。"昔ながら"にこだわるにしても、木舞竹組みの技術を伝承する人がいない」と話すのは、改修工事を多く手がける前村建設(松合)の前村清さん。職人の高齢化が進んでいることや、後継者が不足している現状を訴える。
 町村合併前まで事業に携わっていた宇城市役所の前担当者は、整備事業の位置付けを「観光地として行うのか、保存するためか」と頭を悩ませたという。都市計画として整備するのか、まちづくりか、それとも住宅行政か。今後の方向性を模索する。「保存会にしても、左官職人にしても、後を引き継ぐ人がいない。これからは人材育成も必要」。
 "伝統的町並みを後世に残そう"。地区住民の保存の意識から始まった運動は、行政を動かし、まちづくり事業に広がった。土蔵白壁に託す住民の想いは、昔ながらの「松合」。変わっていく町なみに港町で栄えた当時の姿が見えかくれする。

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