B行政、住民、企業を巻き込んだ物づくり平成17年3月14日新聞掲載
阿蘇市の田園空間整備
 旧阿蘇町(現阿蘇市)が平成11年度から整備着手している『田園空間整備事業』。このプロジェクトは、町全体を屋根のない博物館に例え、農村の持つ豊かな自然や伝統的・文化的な施設を再評価しつつ、田園空間にふさわしい農村景観を保全・復元しようとする狙いだ。
 阿蘇市のプロジェクトでは、現在建設が進む▽情報受発信交流拠点基地(総合案内所)と、それを中心に展開する▽ふれあい水辺公園▽長寿ヶ丘公園▽的石御茶屋跡▽黒川史跡散策道−の合計5つのメニューをメインに構成。地域にある素晴らしい"資源"を保全活用し、後世まで残そうとしている。

・意思の統一

 「やるからには、全国一の田園空間整備を目指す」。阿蘇市まちづくり商工観光課の石松昭信商工係長は、事業計画がもち上がった当初の想いをこう語る。
 「それには、阿蘇をどうしたいのかという事業に携わる者すべての方向性の確認と意思の統一、実際に利活用する立場の人の意見を取り入れなければ意味がない」。行政は住民の声を聞く。ハード面を担当する建設業者は地域の特性を充分に把握した上で整備する。石松係長は、行政、住民、企業すべてを巻き込んだ物づくりが、地域振興への道筋と考え、これまで事業を進めてきた。
 同博物館のサテライト施設の一つとし位置づけられている長寿ヶ丘公園は、阿蘇北外輪の中腹に位置することから、農村景観を望む場所として最高の地とされている。公園は、住民主導の地域づくりとして、これまでに内閣総理大臣表彰や緑のリボン賞などを受賞した。今回の計画でも住民組織による研究会や、ワークショップを行い、様々な意見の中から「この地に交流広場や、展望所等を整備してほしい」との声を公園内に反映した。

・人材育成

 プロジェクトの仕掛け人の1人として動いたのは、(株)大揮環境計画事務所環境計画室の山本久子室長。計画にあたっては、阿蘇町史を片っ端から調査し、資源の掘り起こしを行った。「限られた時間の中で、宝物(資源)をうまく引き出してあげることが私たちに求められていたこと」。住民組織による研究会の場では、地域が活性化するには「最後は地域住民の力に懸かっている。まず、住民が地域を好きになり、地域に誇りを持ってほしい」と訴え続けた。
 特に、総合案内所の役割は、今後、住民が阿蘇地域の良さをどれだけ勉強し、情報発信の場として活用するかにあるという。「改めて地域の資源を見い出し、伝えていく人材が必要」。山本室長は、事業が継続して活性化するためのポイントを強調する。


JR阿蘇駅前に建設中の総合案内所。4月オープン後
は、この施設を中心とした地域の活性化が期待される


住民組織による博物館準備会のようす


地域づくりの足がかりを作った大揮環境
計画事務所環境計画室の山本久子室長

・地域住民が磨く

 今後プロジェクトは、ハード整備を終え、ソフト事業へと移行する。現在は、7月にも本格化する博物館の運営主体『ASO田園空間博物館』設立に向け、準備会が進行中。この会は、行政、住民、企業ら約60人で構成され、運営体制や、ソフト事業の方向性等を検討している。準備会代表で地域郷土史家の中村道則氏は「この事業は計画の初期段階から住民が関わっている。行政、住民、企業が協調し、計画を練り上げることが1番ベストな地域振興策」と話す。
 今あるものをいかに活用していくか。埋もれたいたものを掘り起こす。それを地域住民自らが磨きあげる。「地域が輝き始めるときには、みんなの心が1つになる」。"パートナーシップ"。この事業に携わった者の共通点だ。

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