祝 川尻バイパス完成 〜熊本都市圏の交通混雑解消に大きく貢献       平成18年3月30日新聞掲載
 国土交通省熊本河川国道事務所が進めている一般国道3号川尻バイパスが全線供用開始し25日、富合町公民館で開通式が行われた。これにより松橋バイパスを含む一連の区間が全線4車線でつながり、熊本都市圏南部地域の交通混雑緩和に大きく貢献することになる。


−排水性・低騒音舗装を採用
■交通混雑の緩和・時間短縮
 今回の富合町志々水〜宇土市新松原町間2・4`の4車線化による供用開始で、交通容量の増加や信号現示の見直しが図られる。このため、宇土・三角方面から熊本市へ向かう通過交通は、渋滞なくスムーズに川尻バイパスへ流入可能となるため、主要渋滞ポイントの「松原交差点」の渋滞が緩和される。
 また、今回供用区間の所要時間は、開通前で約6分、開通後で約3分となり、約3分時間短縮となる。この時間短縮効果により、年間約43万人時間/年の渋滞損失時間(約13億円相当)の削減が図られる。

■交通安全の確保
 沿線には、富合小や富合中、宇土高校が立地し、通学路に指定されている。これまで歩道狭小もしくは未設置区間が多く、大型車の往来も激しいため、通学時には学童が危険な状況に置かれていた。
 今回の供用開始で、両側に幅員3b、横断勾配1〜2%の自転車歩行者道が整備され、歩行者・自転車の安全な通行が確保されるとともに、高齢者・身障者の円滑な移動に配慮したバリアフリーな走行空間が形成された。

■沿道環境の改善
 区間の舗装は、一般的な舗装ではなく「排水性舗装」が採用された。雨水を速やかに舗装表面から表層内に排水するため、車両による水はねがなく、ドライバーの視界が良好で、夜間走行時には路面からライトによる照り返しがないため、路面の区画線表示も見やすくなっている。
 さらに、降雨時の水溜まりによるスリップも起こりにくく、通過車両の交通安全の向上に寄与。表層の空隙中に空気が入り込むため、車の走行に伴いタイヤと路面の隙間から発生する走行音(騒音)の低減が図られ、沿道環境の改善に寄与している。
 また、4車線化により旅行速度が上がり、スムーズな通行が可能となるため、通過車両から発生するCO2が年間約3700d削減。これは、二酸化炭素を吸収する森林面積350f分に相当し、熊本城公園の敷地面積の約6倍にあたる。

■緊急医療搬送の支援
 一刻を争う患者に対し、専門的な高度医療を提供できる施設等は熊本市に集中。宇城地域から熊本市内の病院へ向かう緊急車両は多く、川尻バイパスを搬送経路に介する搬送件数は年間約2500件にも上る。
 今回の4車線化で緊急車両が渋滞することなくスムーズに重危篤救急患者を医療施設に搬送することが可能となり、地域住民が安心して暮らせる生活環境の実現に大きく貢献している。


−事業化から36年、最終区間(志々水〜新松原間)が供用
 川尻バイパスは、一般国道3号の熊本市南高江町から宇土市新松原町までの延長7・6`が対象区間。この区間は、国道3号、57号、218号、219号―の重複路線であることから、交通量の増大に伴う交通混雑が顕著となっていた。
 このため昭和44年度に事業化し、46年度に工事着手した。昭和52年度には、延長3・3`を、平成11年度には、熊本市南高江町から富合町志々水までの延長5・19`をそれぞれ供用開始。その後、残る2・4`について事業を促進していた。投資額は296億円で、このうち76億円を今回の供用区間に投入。九州地方整備局が進めている「ちゃくちゃくプロジェクト」にも選定され、効果の高い事業として、集中的・重点的に整備促進された。
 □工期の制約、軟弱地盤対策などの障害を克服□
 今回供用した2・4`区間は、平成13年度から17年度までが工事期間。軟弱地盤であったため、土壌改良などの特殊工法が採用されたほか、道路と交わる河川、水路が農業用として利用されていることによる工期の制限など、様々な障害を克服する必要があった。
 主要構造物には、北田尻橋(五双川)、田尻橋(水路)、南田尻橋(潤川)の3橋と15カ所のBOX(継足し)があり、これらの安定施工、期限内の完成が大きなカギを握っている。
 具体的には、軟弱地盤対策として、路床工では、約1bほど土とセメントを混合した路床改良を行い、路盤と舗装を施工した。BOX継ぎ足しは、約23bの現場打ち地盤改良杭を設置し、段差解消策となる深層混合処理工法を採用している。橋梁についても橋台に約30bの現場打ち基礎杭を施工し、安定化を図った。
 特に、橋梁上部工では、九州で2例目となるTTM床版を採用。この工法は、床版を鉄筋型枠で施工する新工法で、あらかじめ工場で鉄筋型枠を造って現場で施工するため工期の大幅な短縮が図られるという。農業用水に左右される川尻バイパスでの施工で大きな効果をもたらしている。
 □協議会を立ち上げ作業の効率化図る□
 殆どが現道拡幅であったため、既存の地区内道路や沿線に連なる人家、店舗との調整にも力が注がれた。この調整役として活躍したのが施工業者らで組織する松橋監督官安全協議会(日東道路・成川会長)。協議会では、全体工程の調整、安全点検、発注者からの伝達事項の報告、情報公開、沿線・地元住民とのコミュニケーション、災害時の点検―などに取り組み、作業の効率化を図った。
 現在、完成した川尻バイパスの中央分離帯には、小熊笹が植えられ、道路利用者に和みの空間を与えている。小熊笹の一本いっぽんが道路づくりに携わった人たちのように川尻バイパスを見守っている。   


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−川尻バイパス開通記念式典−
九州地方整備局・宮田年耕局長の式辞要旨
「地域相互の交通交流円滑化に寄与」
 本日ここに国道3号川尻バイパスの全線開通記念式典を開催しましたところ、大変お忙しい中にもかかわらず、国会議員の先生方をはじめ、関係各位のご立席を賜り、厚く御礼を申し上げます。また平素より道路事業の推進にあたりまして、格別なご理解とご支援を賜り、深く感謝申し上げます。
 本日、全線供用します国道3号川尻バイパスにつきましては、昭和44年から用地取得に着手し、今回、志々水交差点から新松原町交差点間の2・4`について開通し、総事業費296億円をもって完成となりました。本日の供用は、交通量の増加による慢性的な交通渋滞の緩和、沿道環境の改善が図れるなど、熊本都市圏と八代・宇城地域間の活性化、地域相互の交通交流円滑化にも大きく寄与するものと考えております。
 九州地方整備局で推進しております「ちゃくちゃくプロジェクト」において、平成17年度の完成を目標として整備を進めてきたところであり、本日の供用開始を喜ばしく思いますとともに、用地を提供して頂きました地権者の皆様方をはじめ、地域の皆様方のご努力ならびに関係各位のご尽力の賜と心より感謝申し上げる次第でございます。
 九州地方整備局といたしましては、こういった道路整備を計画的かつ着実に推進していくため、昨今の厳しい財政状況ではありますが、今後とも引き続き所要道路整備を確保してまいる所存であります。本日、ご臨席の皆様におかれましても、引き続き道路整備の推進に対して、ご支援、ご協力を賜りますようお願い申し上げます。
 最後に当地域の益々のご発展とご臨席の皆様のご健勝を心からお祈りして式辞とさせて頂きます。

−松橋監督官安全協議会の会長を務めた
日東道路(株)の鳴川哲広さんに聞く
  「緻密な工程管理で安全施工に尽力」
 工事が最終段階を迎え、ピーク時には元請8社、1日約150人が作業にあたった。錯綜する現場でまとめ役となったのが、昨年6月に各企業の責任者らで発足した松橋監督官安全協議会。会長を務めた鳴川哲広さん(日東道路轄H事部所長)に話しを聞いた。
―協議会の役割は
 工区分けされた施工者間の工程調整や、全区間の安全パトロール、周辺住民とのコミュニケーションなど様々。月に一度、各社がお互いの作業工程を持ち寄り、スムーズに作業できるよう話し合うのが一番の目的だ。突発的な問題が起こった際は、その都度集まり、各社で情報交換し、解決にあたった。
―苦労した点は
 やはり、施工者間の調整。今回の工事は、現道の拡幅区間なので、常に一般車が走っている状態での作業になる。車や人の流れを妨げることなく、お互いが安全に作業しなければならなかった。特に、通行車線の切替えなどは、施工者間の連携が重要になるので、各社で入念に打ち合わせし、スムーズにいくよう心がけた。また、案内板を統一化するなど、沿線の商店等に迷惑をかけないような配慮もした。
―工期も厳しかったと聞いているが
 川尻バイパスは、田園地帯を南北に走っているため、道路下を横切る水路の継ぎ足し工事などは、どうしても農繁期になると作業できなくなる。そのため、地元の水利組合とも綿密に協議し、コミュニケーションを取りながら工事期間を調整した。また、作業できる時期には、逆に工事が集中するので、こちらの工程調整、安全確保にも苦労した。
―工事以外の活動は
 周辺住民の方に喜んでもらえればと、一帯の清掃活動を昨年、企画した。国交省からもすぐに許可が下りたので、各社から数人ずつ集まり、周辺の町道をきれいにしてまわった。半日かけて、2dトラックおよそ2台分のゴミを回収。当然だが、それぞれ担当する現場は、常にきれいな状態を保つよう、心がけていた。
―竣工にあたっての感想を
 4車線化で渋滞が緩和し、少しでも地域に貢献できたのではと思う。私たちの仕事は、形に残る仕事。何年か後にここを通るとき、「この道は私が造った」と、胸を張って思い出すだろう。これは、私だけでなく、この現場に携わった作業員みんなの想いでは・・・。

[目次]