熊本城復元整備の目玉事業で、来春の一般公開が間近となった本丸御殿大広間。400年前にさかのぼって当時を忠実に再現するこの大普請の裏側には、多大な努力をした専門工事業の姿があったという。目指したのは、資材、職人とも限りなく地元熊本にこだわること。大工、左官、建具など専門工事の知られざる現場にスポットを当てシリーズで紹介する。
H 板金   (有)小城板金金属工業(富合町) 平成19年12月27日新聞掲載
 本丸御殿には、現代建築様式を取り入れた部分も存在する。当時の遺物も無いため復元とは呼べないが、本丸御殿が観光施設として機能していくためには、必要不可欠な部分だ。外装仕上げとなる谷樋、軒樋、堅樋(たてどい)には、本丸御殿と現代建築様式を調和させた居ャ城板金金属工業(富合町、小城一晃社長)のノウハウがある。
外装仕上げに伝統と近代を融合

 本丸御殿の屋根工事で大きな難題となったのが、大台所棟と大広間棟(麒麟長之間棟)との合わせ部分。ここは三方の屋根から、水が一度に集まる場所で、水漏れの危険性が最も高く「その対策をどうするか」の一点に課題が集中した。
 4代目の小城社長は、谷樋に用いた遺物も発掘されておらず、前例も無いため試行錯誤を繰り返す。「止水性を第一に考えた時、これしかないと思った」。苦悩の末、先代で父の小城雄一会長のアドバイスを受け、鉛を使った谷樋を独自に考案。通常のルーフィングを二重に敷き詰め、その上に鉛、ステンレスといった施工法で課題を解消した。
 鉛は板金使用材の中で比重が高く加工もし易い上、耐食性にも優れているなどの利点がある。現代ではあまり使われないが、建築板金では昔から一般的な部材。「ステンレスで強さも兼ね合わせたので、400年は充分持つ」。復元事業を陰で支える父子(おやこ)鷹は、自信を持って公言する。
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 外装仕上げのうち雨樋と堅樋は、本丸御殿の外観を大きく左右する。デザインや形状次第では、外観を損ねることにもつながる。建物に違和感なく溶け込みながらも、最先端の施工技術を取り入れなければならない。数年前から熊本城の復元事業に携わった経験から、小城社長にはそのことが解っている。
 「雨樋はジョイント部分が見えないようにした。堅樋も一本もの。ステンレスと銅板で施工しており、機能を有しながらも本丸御殿の建築美を邪魔しないデザイン。何回も設計者と協議しながら今の形を提案した」。伝統建築と近代建築様式が融合した瞬間だ。
 本丸御殿で培った技術は、伝統建築物にそのまま応用できるものが少なくない。来年2月には、熊本市にある古民家を再生するプロジェクトが浮上しているという。「既に参加の誘いも来ている」と小城社長。伝統建築に携わるチームの中に、小城の名が漏れることはない。






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