熊本城復元整備の目玉事業で、来春の一般公開が間近となった本丸御殿大広間。400年前にさかのぼって当時を忠実に再現するこの大普請の裏側には、多大な努力をした専門工事業の姿があったという。目指したのは、資材、職人とも限りなく地元熊本にこだわること。大工、左官、建具など専門工事の知られざる現場にスポットを当てシリーズで紹介する。
F 畳   (株)タナカ建装(熊本市) 平成19年12月20日新聞掲載
 目下作業の真っ最中という畳工事。熊本市の潟^ナカ建装(田中美範社長)を中心に京都などで修業経験を持つ県内の畳店が結集し、約580枚の畳を着々と敷き詰めている。
 畳表と言えば、地元熊本が誇るブランド。当然、本丸御殿のすべてに八代産が使用されている。い草は新品種の「ひのみどり」と在来品種の「きよなみ」。中でも、昭君之間と若松之間など格式高い部屋には、ひのみどりからさらに高品質の茎だけを厳選した最高級の「ひのさらさ」を採用。織りのきめ細かさや香り、クッション性など、「まさに100年は保つと言っても過言ではない」と田中社長は胸を張る。
人間の五感に訴えかける最高級の畳

 畳1枚の大きさも別格だ。発掘された石垣に沿って建造される本丸御殿には規格品が合わず全部が特注サイズとなる。一般的な本間畳が幅95・5a、長さ191a、厚さ5・5aに対し、本丸御殿の最大の畳は幅106a、長さ212a、厚さ5・8a。重量も通常の約30`を大きく上回る約50`で、搬入には2人がかりの力を必要とする。
 「長年、畳仕事をしているが見たことのない大きさ」。工事に参加した椛q崎(熊本市)の倉嵜勝也社長は、当初設計図を見た時の驚きの様子を語る。
 「ここで問題なのが、各部屋に合う大きさにするための畳床の幅継ぎ法=v。畳表は、今回のために機械を改良して編み上げるが、土台となる畳床は2つの畳床を手編みして仕上げる。「早くて綺麗、しかも丈夫な編み方」。京都の社寺などの視察や毎月の勉強会など試行錯誤の末、2つの畳床を螺旋状に20_間隔で編む方法を考案した。
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 昭君之間や若松之間など特級の畳を手掛ける屑M畳店(熊本市)のM豊社長は、幅継ぎ方法が決まった時点から毎日作業場で1人黙々と訓練を続ける。職人歴50年の実績を誇るが、今回の編み方は容易でなく、製作中はすべての雑念を追い払い精神を集中した。近々、同部屋に畳が敷かれる予定で「きちっとハマったところを見るまでは」と緊張感で夜も眠れない日々を送る。
 建物の中で人間が常に接触する部分は床。その床に敷かれた畳は踏んだ感触などで善し悪しがはっきり分かるという。「本丸御殿の畳はすべてが最高級。見た目、肌触りなど人間の五感に訴えかける」と田中社長。職人たちが丹精を尽くした畳を味わえるその日が待ち遠しい。






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