平成22年1月3日新聞掲載
 地域の建設業団体が、保有する人材や機材、ノウハウなどを活用し、地方自治体や農業、林業、観光、環境などの異業種と連携して、建設業の活力再生や地域の活性化に取り組む「建設業と地域の元気回復助成事業」。 国が必要経費を助成するもので、熊本県内からは、1次で5事業、2次で1事業が認定された。採算性のみを求める新分野進出と異なり、どの事業も地域が抱えている課題の解決に向けた事業化を目指しているのが最大のポイント。事業期間終了後も継続して取り組むことを視野に入れており、建設業の活力再生や雇用の維持・拡大につなげるモデルになるものと期待される。1次募集で選定された5事業の取り組みを紹介する。(事業によっては認定時の計画のため、今後変更の可能性あり)

建設業の参入による森林・林業再生プロジェクト
鹿本ふるさと森林づくり協議会
(県建設業協会鹿本支部、鹿本地域振興局、山鹿市、鹿本森林組合)
協働して新林業システムを 鹿本支部は、建設業の持つノウハウを活用しながら、森林整備に必要な資格や技術を取得し、森林組合が技術を建設業者に指導。県と山鹿市は円滑な連携を補助する。
 具体的には▽労働安全作業の研修▽専用機械の知識・操作技術の取得と現地研修▽地域の実態に応じた作業システムでの現地研修(作業道と機械化作業を効率的に組み合わせた作業等)―を予定。
 中山間地域の建設業は、砂防・治山・林道工事などで森林に道を開き、大型機械を操作するのにも慣れており林業の近代化を支援する潜在力がある。しかも、公共工事の減少で建設就業者が余剰となり、これといった産業のない中山間地では、雇用の場が強く求められている。林業は専門技能を必要とする分野であるが、林業従事者は年々減少し、新たな担い手が求められている。
 森林荒廃を防ぎ地球温暖化を解決するためにも、林業への参入を促し林業のベテランが熟練技能を継承しながら、林業と建設業が協働した新しい林業システムの確立が可能である。
 20年度から、このような取り組みを開始し約8fの森林を整備。21年度は同事業を活用し約20f程度を整備する考え。助成事業終了後も試行的取組みを継続させていきたいとしている。

平家伝説の里五家荘観光再生事業(誘導標識整備、体験農園整備)
平家伝説の里観光建設協議会
(八代市、県建設業協会八代支部、泉町観光協会、五家荘地域振興会)
維持管理や新事業参入方策も 五家荘地区への観光入り込み客数の増加を目指し、誘導標識を設置する。標識のデザインには、沿線を彩る文化遺産や自然、観光施設等を考慮して地域のイメージアップを図り、女性層でも安心して周遊できる観光ルートを確立する。
 建設業界にとって、標識設置個所の検討段階から地域に入り込むことで、設置の事業収益はもちろん、維持管理から修繕までの円滑な整備体制の確立と地域との信頼関係の醸成が図られる。現在、紅葉シーズンに委託している交通整理業務等への、新たな事業参入の機会が生まれ、設置後においても、維持管理など協働して実施し、新たな雇用創出機会の確保や持続的な事業展開が見込まれる。
 また、五家荘地区に、体験型宿泊施設「五家荘自然塾」を整備しているが、体験メニューが不足するため、新たに施設内に耕作地を造成して体験農園を整備。維持管理に努め、新商品開発の拠点と位置づけることで、新規交流人口の確保と増加を図る。協会として整備後の体験メニューの開発、事業の運営に協働して取り組みながら、新たな事業参入の方策を目指す。
 事業収益のみならず、農地法改正を見据えた自然塾を拠点とした広域的な体験農園整備推進と交通アクセス整備事業への展開も見込んでいる。

竹でつながるコミュニティモデル事業
エコ・コミュニティモデル構築協議会
(県建設業協会、多良木町役場、多良木町農業委員会、多良木町森林組合)
地域循環型社会構築の一翼に 竹を身近で再生可能な資源≠ニ捉え、建設業が中心となり第1次産業主体の循環型社会を目指す。
 耕作放棄地や整備されていない山林、竹林に広がる竹をチップやパウダー化し、これを基材として堆肥を製造するほか、竹パウダーを個人のゴミコンポストの基材として補給する。耕作放棄地には食用の菜の花を栽培し搾油・販売。家庭で使用したナタネ油は回収後、バイオディーゼル燃料に変換し、農機具や運搬機等に使用する。また、竹に生理活性の高い精油成分が含まれ、防臭や抗菌作用があることが知られており、有効利用の検討や生産の可能性を調査する。
 竹林が整備されることで農林業について新たな展開が期待され、徐々に雇用が創出。建設業にとって、荒地整備や菜の花の栽培など目的を持った農業への参入は安心であり、何より地域の景観、雇用、ゴミを中心とした地域循環型活動の一端を担うことで地域貢献度の高い仕事ができる。また、菜の花栽培以外に農作業の受託などが産まれ、新たな雇用の創出が期待出来る。
 建設業の雇用の維持が出来れば、昨今の異常気象が心配されるなか、災害時の緊急出動の体制が維持できる。この取り組みが、県内市町村の雇用やゴミ・環境問題のモデルとなることが期待される。

人吉球磨地域における回遊性環境の向上に関する事業
人吉球磨地域活性化協議会
(県建設業協会、熊本県、人吉球磨地域観光推進協議会、球磨地方森林組合連絡協議会)
ノウハウ活かしソフト事業も検討 観光客の回遊性を向上させるために、国宝青井阿蘇神社などの歴史文化遺産や産業遺産等の観光地整備をアピールする地域の特色を出した個性的な案内標識等をモデル的に整備するとともに、建設業が継続的に取り組めるソフト事業を検討する。案内標識等は、地元産木材の活用も検討して、県、人吉球磨地域観光推進協議会、球磨地方森林組合連合連絡協議会と連携して整備する。
 このほか観光客が回遊できるルート開発など、建設業のノウハウを活かしたソフト的な観光事業の検討に取り組むことで、課題解決の検討に留まらず、助成事業終了後の継続実施を見込んでいる。
 今後は、整備個所の選定や案内標識など標準デザインの決定、モデル的整備、ソフト的取組事業の検討―を実施し、23年度以降、案内標識等の充実拡大と、観光地の周辺整備やソフト事業等に取り組む予定。
 また将来的には、行政や民間等による観光地周辺の道路や遊歩道、駐車場整備などの環境整備、寺社仏閣等の文化財や観光施設等の観光資源の工事、さらには観光資源を用いたソフト的な事業展開等について、建設業に対する新たな需要や取組みが生まれ、建設業の活力再生や雇用の維持・拡大につなげたいとしている。

上天草市松島町合津地区耕作放棄地活用事業
上天草地域産業・雇用創出協議会
(上天草市、県建設業協会天草支部、町商工会、あまくさ農業協同組合、漁業協同組合、上天草市誘致企業連絡協議会)
耕作放棄地と農業後継者不足を解消 地域のニーズや特性に応じた産業と雇用の創出を目指し平成20年、市を中心に商工会や建設業協会、JA等からなる上天草地域産業・雇用創出協議会を設立。松島町の建設業者から合津地区の耕作放棄地を活用して雇用創出を図る提案があり、21年から助成事業を活用して取り組んでいる。
 これまでに、まとまった耕作可能な農地の選定や、周囲の農家と競合しない試作作物の選定を進めており、地元物産館や市内各宿泊施設等での生産作物の販売を目指している。
 建設業協会天草支部は、除草作業や農作物の作付けに向けた取り組みを行う。今後は、作物の検討や研修、土壌状態の確認、土壌改良などを経て2月以降に試験作物を作付けする計画。
 松島町合津地区の耕作放棄地を建設業の異業種参入による活用事例として位置づけることにより、市内各所に点在している耕作放棄地を解消する波及効果が得られる。
 また、建設業の雇用確保という面で地域に対する経済効果は大きく、農業が抱える後継者不足の解消にもつながる。試行を検討している作物についても、収穫期などを6〜10月頃で得られる作物の検討に重点を置くことで、本業に支障をきたさないかたちを作り、将来的に継続出来るとしている。

[目次]