建築フォーラム〜僕らの学校〜

平成18年6月1日新聞掲載
 5月27日に熊本市立図書館ホールで開かれた「白川の水辺空間を考えるフォーラム」では、『白川そだち〜みて! ふれて! かんじて!〜』をテーマにパネルディスカッションが繰り広げられた。討論会では、白川の水辺空間検討会が最終報告として提示した整備計画案に対し、各パネリストから意見が出された。みんなの白川のあり方をみんなで考える主旨のもと、会場と一体となって議論が進められた。「生き物が暮らし、人々が集う白川」。様々な想いが行き交った。
白川がそだつと良い川づくりができる 〜白川水辺空間計画案の概要〜
白川の水辺空間検討会委員  小林一郎 氏
 白川の特徴として@熊本市の中心部を流れる貴重な自然空間A流域面積に対して平常時の流量が多いB白川市街部は対岸を意識できる川幅C川が見えにくいD土砂の流出が多いE天井川F水道水として利用されていない―などが挙げられる。
 こうした現状分析を踏まえて白川を考えると、川に入るのが大事じゃなくて、川に入ったような心地よさが必要だ。動植物や釣り人、アプローチのための階段など、川に動きがあることが求められる。でも白川じゅうがそうなると困るので、白川には緑の区間の整備があり、そのつなぎをどうするか、上流は、下流は、といったそれぞれ違う考え方が必要となる。
 このため河口から小磧橋までを5つに分割し、それぞれゾーニングし、特色を活かした提案を考えている。それぞれの魅力を最大限に引き出すことで、相互に連携し、活性化していこうというものだ。
 検討会では白川整備に当たって@各地区(ゾーン)ごとの特徴に合った計画にするA隣り合う地区(ゾーン)と調和しているB地域の意見を尊重し反映するCどこから見ても良好な景観であるD水辺の緑を守り、さらに増やすE川がよく見え、水辺に近づけるFまちづくりと一体となった空間をつくる―を留意すべき点としている。
 以上が検討会が示した方向性だが、私なりの水辺整備の理想型を考えたので紹介したい。川づくりはまちづくりと連動しており、まちづくりは人づくりと不可分に結びついている。結果として「まちづくりは行政が、人づくりは地域で、川づくりは専門家・国・住民で」として水辺整備の中でそれぞれが育っていけばいいなと思っている。
 そのためには、単に国土交通省にお願いするのではなく、自分が出来ることを探しましょう。自分が育ちましょう。こうした視点で白川をそだてると非常に良いものになっていくと思う。 
パネルディスカッション「白川そだち〜みて! ふれて! かんじて!〜」

 丸野 私は小さい頃、白川で魚釣りをした記憶がある。白川との関わりをまず振り返ってもらいながら、白川の水辺がこうなったら素敵だ、と思うことについてお話下さい。
 浜名 少し古いお家に行くと、昭和28年の水害の時は、水がここまで来たんだよ、といった爪痕が柱に残っていたりする。白川はそういった恐怖からか、もし水が来たらどうしょうとドキドキしながらいたのが最初の記憶となっている。
 川に直接入って遊ぶことはなく、先生や両親からも「行くな」と言われていたので大っぴらに行くところではなかった。ただ用水路ではよく遊んだ気がする。鯉や亀やドジョウがいたし、つくし、せりを摘んで食べたこともあった。井手ではホタルも出ていてとても豊かだった気がする。
 最近は安全になった代わりに動植物が少なくなったようだ。でも川の土手はとても豊かで、整備されていない所がいい。その時々に色んな表情を見せてくれる。そういう所を散策するのが今の私と川との関わりになっている。
 一句「月の夜の 床に体も透き通り 水門(みのと)を越ゆる 早瀬の音す」(三本松堰での風景を歌った)
 幸山 小さい頃から支流の井芹川、西浦川と共に育った気がするが、ある時期熊本を離れたことで川から自分が切れた時期があった。でも熊本に帰ってきてから、白川に関わる団体の方と関わるようになり、接点を持つようになった。
 川は人づくりであり、まちづくりであると思っている。白川では様々な活動が実行されているが、それをどうやってまちづくりの中にとけ込ませていくか。これから大事になっていく気がする。
 下津 昭和28年の水害で洗礼を受けたのが最初だ。かなり厳しい自然の試練を受けたことから、川に対して脅威が植え付けられた印象がある。川に関する研究者の立場で接するようになって、身近な白川が研究フィールドになった。本日のタイトルは「白川そだち」だが、白川が私を育ててくれたと思っている。水害に遭い、その川の整備計画に携われたということに対し、何か因縁めいたものを感じている。
 川を研究していると、川は人間が接して楽しいところだと自覚することができるようになった。そういう気持ちで整備計画を完成させることが、私に与えられた任務だと思っている。


 丸野 「安全」と「楽しむ」ということは両立しがたいところもあるが、それを如何に調和させていくかを考えなければならない。河川管理者の立場でご意見をお願いします。
 安藤 平成14年度に決まった白川水系河川整備計画@安全で親しめるA多様な動植物が生息・生育するB上流から河口まで、流域が一本でつながる―川づくりを3大目標としてを揚げた。現在、この目標に向かって整備を進めている。
 白川は熊本のまちを流れている貴重な自然空間だ。河口から小磧橋までの面積は水前寺公園の約47倍ある。熊本市の中で貴重な空間だし、資源として捉えることが出来る。
 モノは造るだけではなく、どういう風に活用していくかが重要だ。活動を川に付加していく一例として広島の京橋川でのオープンカフェをご紹介したい。平成16年から民間と河川管理者が一体となって始めた取り組みだが、従来は出来なかったのが、都市再生、地域再生を進める中で、一定の条件を満たせば可能となっている。現在は、水辺のコンサートもやっているそうだ。
 これは一例だが白川にもそんな空間があっても良いような気がする。ただ我々行政がこうしましょう、というのではなくて、地域の皆さんがどういうことを望んでいるのか。しっかりと受け止めていきたいと思う。
 丸野 圧倒的なスケールで「緑の空間」があるが、まちづくりの観点からこの貴重な自然空間を活かすことについてはどうでしょう。
 幸山 都市計画的にも大事な空間だと思っている。特に中心市街地の中で、熊本城周辺と白川の水辺空間は2つの重要なポイントとなっている。身近な存在として気軽に立ち寄ってもらえる空間を創っていくことが今、まさに求められていると感じた。
 熊本市では、中心商店街と新町・古町地区、熊本駅周辺までの約270fを中心市街地として位置づけている。これをどう連携させて活性化させていくのかということが、新幹線開業まで5年を切った中での課題となっている。
 白川を都市計画の中でどう位置づけて、『水の都』、『森の都』を実感してもらえるかが重要となってくる。白川は遠い存在のようなので、まちに如何に近づけていくか、動線をどう創るか、市民との協同でやっていきたい。
 丸野 今、白川と付き合うための仕掛けとしてアイディアを募集している。市民代表としてユニークな発想はありますか。
 浜名 川と人とは棲み分けてもいいかなと思っている。全てを水辺空間としてつなげていくことの中に、メリハリとか棲み分けということをぜひ考えて欲しい。川と人とが遠いということで、せせらぎや階段をつくることが話に上がっているが、白川には植物がたくさんある。興味を持っていないだけで、水辺は充分豊かだと思う。
 白川の形態から川が見にくいとうことがあるが、川を遠くから見てもいいじゃないのか。川を見ていると自然と物思いにふけってしまう。川を通して自分を見つめ直す機会を与えてくれる。
 丸野 今回のキーワードに『そだつ』というのがあったが、私たちは川を、まちを、人を育てるということが出てきた。川は生き物だと思う。時には声かけて気遣ってやらなければならない。気遣うことで私たちが川と楽しめるのではないだろうか。

[目次]