平成22年1月1日新聞掲載
 公共事業の削減などで厳しい経営環境に追い込まれている建設業。そんな中、経営基盤の強化と受注機会の拡大を図るため、企業合併への関心が高まっている。熊本県では、合併する企業に対して補助金の交付や総合点数加算などの合併特例措置により支援。特例措置が始まった平成17年4月以降、24件の企業合併が行われている。
 本企画では、合併特例措置を紹介するとともに、実際に合併した企業の目的やメリットなどを聞いた。
平成17年度以降の合併は24件 

合併の形態
 主に「新設合併」「吸収合併」「営業譲渡」―の3種類が考えられる。
 「新設合併」は、全当事会社が解散して、同時に新会社を設立する。新会社ができることから、改めて許認可を取得する必要がある。
 「吸収合併」は、一方が消滅し、もう一方の会社が消滅会社の資産負債その他の権利義務をすべて引き継いで存続する。 
 「営業譲渡」は、営業の全部または一部を他社へ譲渡するもの。簿外負担は承継しない。
 建設業は、既存の許認可(建設業の許可や入札参加資格など)をすでに取得している場合が多いので、吸収合併が圧倒的に多い。
県内の動向
 県内の合併の推移は、17年度4件、18年度6件、19年度4件、20年度3件、21年度(9月末現在)7件―の計24件。そのうち、吸収合併が20件、営業譲渡が4件となっている。県土木部監理課には問い合わせや相談も増えており、今後の動きが注目される。
企業の関心
 県が経審説明会の際に行っている建設業者へのアンケート調査では、企業合併への関心が高まっている。
 21年の合併に関する有効回答1451件のうち、@「合併した」(1・2%)、A「検討中」(2%)、B「検討したことはあるが合併に至らなかった」(3・9%)、C「検討したことはないが関心はある」(34%)。Cについては、前年(29・2%)よりも4・8ポイント増加した。

特例措置で合併支援《熊本県》

 熊本県は、建設産業振興プラン(平成16―22年度)のアクションプログラムで、県内建設業者の経営力強化等の一つとして企業合併を掲げた。建設業を「地域に欠かせない重要な産業」(県監理課)と捉え、技術と経営に優れた建設業者に生き残ってもらうための施策を推進している。
 平成17年度から始まった合併特例措置もその一つ。入札参加資格の格付では、合併後の総合点に3年未満は15%、3〜5年は10%を加算。格付のない業種に対しても経営事項審査の総合評定値に加算措置される。さらに格付等級や順位の見直しも実施している。
 入札参加機会の確保では、合併等に伴う消滅会社を営業所とする場合、営業所でも消滅会社の等級や工事実績等により、指名や条件付一般競争入札に参加できる優遇措置をとっている。【図参照】
 20年度からは建設事業者合併促進事業も始めた。モデル的な事業者に合併経費の一部を助成する制度。県内建設業者の合併促進を財政面でバックアップする。
 @県内建設業者A県入札参加資格の有資格者B1業種の平均完工高1億円以上C自己資本額4000万円以上―等の要件を満たすと、合併経費(契約書作成、合併等公告、商業登記、会計処理、経審受審等)―に係る費用の一部が補助される。限度額は対象経費の2分の1または75万円まで。







INTERVIEW 「お互いの信頼関係が大事」 (株)藤本組(天草市)
大維建設(株)と合併(平成21年)

――合併の経緯を
 お互いを補完し合えるような合併は、力を付けていくための一つの方法と考え、7―8年前から検討していた。しかし、これまでに持ち上がった話は全て破談に終わり、今回の話は5件目。
 合併相手を探すのに、最初は会社で考えていたが、失敗していく中で「やっぱり人だな」と気が付いた。お互い信頼関係を持たないと成り立たない。大維建設鰍フ村田氏は以前から見込んでいた人物。彼の人柄に惚れ込み、口説いた。

――メリットは
 一番は、今まで一人で背負っていたものを、二人で担げるということ。それに見合うだけの信頼できる人でなければいけないが。
 そして、大維建設鰍ェ上天草市だったため、上天草市と天草市の両方に参入できるようになった。県の合併特例措置により特A、A、Bの全クラスにも参入。エリアとともに、上下も広がった。
 業界の変化に対して悩みを共有できたり、判断が独善的にならないなどという点も、メリットとして挙げられる。
 デメリットはほとんどないが、「後戻りできない」とは感じる。この業界で、最後まで前のめりでやっていこうと思っている。

――合併を考えている企業にアドバイスがあれば
 合併を身近なものとして勉強すること。本もあるし、人づてに聞くのも、税理士や県監理課に相談するのもいい。まずは動き出すことだ。
 営業譲渡は別だが、二つが一つになろうとする合併は、経営トップの信頼関係がないと成り立たない。それができる人を探すこと。

◆元大維建設且ミ長・村田氏のコメント
 21年春に格付がAからBに落ちた。業界に魅力を感じていなかったけれど、負けたままでは悔しい。大維建設鰍フ名前は消えるが、リセットして、社長の右腕として建設産業に向かってみようと思った。



INTERVIEW 「組織の存続で、雇用を維持」 (株)舛本工業(上天草市)
(株)新田組と合併(平成18年)

――合併の経緯を
 建設業で頑張っていくためには、単独ではなかなか生き残りは難しく「合併しかないかな」と、天草管内の数社で合併について勉強していた。その中でグループ分けをし、我が社と叶V田組が順調に進み合併に至った。
 受注環境が厳しくなり、競争が激しくなった。倒産して組織が無くなると雇用の機会がなくなる。それが一番悲惨だ。合併し、組織を存続させるさせることで、雇用の維持ができればと考えた。

――メリットは
 受注面で言うと、特Aの仕事が減った分を、Aクラスの叶V田組の権利で補ってくれている。上天草市、天草市、県の工事に参入でき、メリットはかなりある。
 技術面では、合併前の特A単独の時は、直営でやる工事もあるが、現場の作業関係は下請にお願いしていた。叶V田組は、直営の作業員もいるし、下請の経験もある。我が社が知らなかった下請の苦労を分かっている。
 合併したことで「前向きに努力を重ねている企業」として見られ、世間からの評価もアップしたようだ。
 二つの組織を一つにしたことで、社内の人間関係にわだかまりがあってはいけない。月一回、全社員参加の全体会議を開くなど、意見を言いやすい環境を作っている。

――アドバイスがあれば
 各企業で負の部分が大なり小なりある。そういったものを全て出し合わないと合併はうまくいかない。合併の目標や、「本気のやる気」がないと頓挫してしまう。合併をやる目的が明確なら、問題解決の方法は各企業によってそれぞれにある。

◆元叶V田組社長・新田氏のコメント
 合併前はAクラスだったが、先を考えると維持していくのは無理だと感じた。縮小するか、廃業するか、合併するかを考えた時、社員を辞めさせることは出来ないと思い合併を決意した。


[目次]