大工育成塾 〜日本の伝統建築を継承へ〜

平成17年5月26日新聞掲載

鏡町の(有)ドルフが塾生受入れ
 日本の伝統的な家づくりである木造軸組住宅の技能・技術を担う若者を育成するため、(財)住宅産業研修財団が平成15年度にスタートさせた「大工育成塾」。集団で学ぶ「教室講義」に加え、全国各地の受入工務店による経験豊富な棟梁が直接技術指導を行う「現場修業」を取り入れたのが最大の特長だ。
 この受入れ工務店の1つが八代郡鏡町にある泣hルフ(村上幹夫社長)。昨年4月から塾生を受入れ、棟梁の指導のもと、大工職人の育成に取り組んでいる。「ただ腕がいいだけの大工になってほしくない。地域の皆さんから信頼され喜ばれる人間性豊な大工≠ノ育って欲しい」と熱い思いを語る村上社長。塾生を受入れた経緯や今後の家づくり等に対する考えを聞いた。
−受入れ工務店になられた理由は
 平成元年、鏡町の特産品であるい草≠フ新たな用途開発と需要拡大を目的に異業者交流をスタートさせ、い草を使った襖・ドア・天井・クロス−等の商品化に成功した。その活動を通して知り合った東和大学(福岡市南区筑紫丘1−1−1)の永野義紀助教授から、大工育成塾のお話を頂いたのがきっかけ。
 最初、我が社でいいものかと戸惑いもあった。しかし、住込みの弟子を受入れた経験もあり大工職人という大きな夢を抱く若者の手助けになれば−と考え決断した。
−塾生への指導方針は
 我々は「技術は見て盗め」で育った世代だが、今の時代このような指導は絶対に通用しない。棟梁と二人三脚で、1つひとつを説得させ、理解してもらうよう教えている。社内の20代、30代の若い職人も積極的に指導したり、コミュニケーションを図るなど、全員で塾生をサポートしている状況だ。
 入塾時に「3年後、小さな家ぐらいは建てることが出来るようにしてやる」と約束した。是非とも実現させてあげたいと思う。

−どんな大工に育ってほしいか
 「一人前の職人になりたいのなら、研修期間(3年間)だけでは無理。最低でも5年から10年はかかる。その後も、一生が勉強だ」と言っている。あとは本人の頑張り次第。
 いずれにせよ、大工職人としての技術は勿論だが、人間性が一番大切だと思う。人間性を養えば技術も自ずと伴ってくる。地域の方に喜ばれる職人になってほしい。
−今後の取組みや目標は
 個人住宅も大手企業の資金力や営業力等に押され、木造軸組住宅を建設する地場企業は非常に厳しい。しかし、木造軸組住宅は、日本の気候風土に適合した優れた長所が数多くあるのは誰もが認める所。今後は環境や健康にも優しい「い草」を活用した襖・ドア・天井・クロスや、格子戸パネル工法を用いた地震にも強い木造軸組住宅のアピール・普及に努めていきたい。このことが、い草の需要を高め、地域の活性化にも繋がると思う。
 最近では「大工育成塾」も広く一般に知られるようになり、受入工務店を希望する業者も増えてきていると聞く。将来的には、受入企業間で全国的なネットワーク組織が形成されるよう願っている。
棟梁によるマン・ツー・マン指導
棟梁・高山健次さん
−指導はいかがですか
 塾生を指導するに当たり、鉋や鋸、継手などの基礎や重要となるポイントをしっかり身につけるよう指導している。
−塾生の内田さんはいかがですか
 なかなかの腕前だと感じている。これから、きちんと仕事の出来る大工に育って欲しい。
−ご自身が修業されていた時代と比べいかがですか
 私の時代は「技術は盗め」という時代。大工育成塾の制度は正直言って羨ましい(笑)。大変恵まれた環境だと感じている。

塾生・内田豊彦さん(19)
−入塾したきっかけは
 小さい頃からの夢が大工でした。高校で建築科に進み、進路を考えていた時に大工育成塾を知り、応募しました。
−研修はどうですか
 2年目を迎えましたが、1年間学んできたことを現場に生かしていきたい。塾に入る前は、大工は単純に家を建てるだけだと思っていました。でも、実際は完成までにコンクリートの打設など土木の要素も含まれていて、色々な工程が必要なんだと驚きました。
−苦労する点は
 鉋やノミの研ぎものが難しく、なかなかうまく出来ません。
−将来の目標は
 自分の手で、立派な自分の家を建てるのが夢です。
【大工育成塾の目的】
 日本の職人文化・ものづくり文化が生んだ木造軸組住宅は、日本の気候風土に適合した形態や仕様、融通性に富んだ間取や空間構成、長寿命化のための補修や増改築の容易さなど、優れた特徴を数多く有している。このため、その長所を現代の住まいに活かし、良好な住宅生産と固有文化の伝承を図っていくことが必要不可欠である。
 しかし、高度な技能・技術を持つ大工技能者は、数の減少や高齢化が進み、高度な技能・技術の伝承が困難になりつつある。大工育成塾は、伝統工法を活かした木造住宅の生産体制を再構築し、職人文化・ものづくり文化の再興を担う若者を技と心の両面から育成する。
【教育方針】
 3年間で、木割り・規矩術・墨付け−など大工技能の理論等についての「教室講義」と、受入工務店での「現場修業」からなる職人教育を体系的に実施する。
【教室講義】
 全国に4カ所ある教室に塾生が定期的に集合。体系的に組まれた授業で、伝統的な木造住宅に関する技術・技能の理論を学ぶ。
【現場修業】
 全国各地の受入工務店で、経験豊かな棟梁が実技指導。現場を通し、実践的な伝統木造住宅に関する技術・技能を習得する。
(有)ドルフ
住所:八代鏡町鏡村461-5
電話0965-52-7373
FAX0965-52-7291

 昭和60年に(有)村上建設として設立。
 住宅作りだけでなく、『衣・食・住』全ての分野に関係する商品も手掛け、地域に貢献する会社づくりに取り組む。平成15年8月にドイツ語で村≠意味する「(有)ドルフ」へと社名変更。
 地域の活性化を図るため、町の特産物であるい草≠利用した商品開発をはじめ、格子土パネル工法を用いた地震に強い木造住宅の普及にも力を入れている。

[目次]