迫るCALS/EC、県内受発注者の動向を追う          平成19年1月29日新聞掲載
 建設業IT化の流れを受け、地方自治体へも広がってきたCALS/EC(公共事業支援統合情報システム)。電子入札は県と熊本市が、電子納品は県が平成20年度の本格運用―と完全実施まで1年あまりとなった。
 他の市町村をみると、検討中の自治体が半数を超え、熊本県CALS/EC基本構想で運用目標年次に設定した平成23年度に向け具体的に動き出すなど、公共事業に携わるうえで電子化への対応が必須となってきた。
 昨年末に弊社が実施した自治体と建設業者へのアンケート結果をもとに、今後の動向や取り組むべき課題、問題点などを探った。
電子入札
検討中が31自治体、20年度から試行予定も
   〜「近隣の動向」「県の運用状況」がカギ〜
19年度 県=工事・コンサルすべて電子化
熊本市=下位ランクへ対象拡大
 県・熊本市は20年度から完全電子化
 県・市町村共同利用型システムで一部運用中。
 熊本県は、@一般競争入札(条件付含む1億円以上)すべてA(通常型指名競争入札)工事が土木・建築B以上、その他業種が設計額2000万円以上B業務が設計額1000万円以上で運用中。平成19年度は、一般競争入札(条件付含む1億円以上)と通常型指名競争入札すべて。20年度は、随意契約を含むすべての案件が対象となる。
 熊本市(本庁分)は、土木・建築B以上、電気・管・舗装・造園A、その他2000万円以上、業務1000万円以上で運用中(白蟻・花苗・保守除く)。19年度中に対象範囲を拡大し20年度からすべて電子入札となる予定。水道局はまだ導入しておらず、18年度中に検討会を開くとしている。
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 開札時間5〜10分に短縮、入札事務が効率化
 県・熊本市とも、開札時間の短縮効果を最大のメリットに挙げる。
 電子での対応が間に合わない業者に限り紙(書面)入札も認めているため、紙の参加者が多い場合、時間は従前とあまり変わらない。
 しかし、全員が電子の場合は1件あたり5〜10分で開札でき、これまでの2分の1から3分の1に短縮。20年度の本格運用(完全実施)以降は、入札事務効率化による時間短縮とコスト縮減効果が大きくなるものとみている。開発運用コストも共同運用で大幅に抑えられたとしている。
 入札参加の確認作業については、発注者側はこれまでとほぼ同様だが、入札参加者は電子申請できるため、時間と費用が削減できる。
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 次回の入札参加時はほぼ全社が対応
 全業者に占める利用者登録者数(18年11月時点)は県が24%の1328社、熊本市が市外業者含め工事26%、コンサル20%。
 県は、18年10月から出先機関での運用を始めたこともあり、利用届提出者が急増。熊本市は、最大3カ月以内の電子環境整備を条件に紙入札参加承認願いを認めており、次回の入札参加時には、ほぼ全社が電子に対応しているという。
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 検討中は31自治体、23年度本格運用が最多
 県内31市町村が検討段階。うち30自治体が県・市町村電子自治体共同運営協議会の電子入札部会に参加しており、27自治体は県・市町村共同利用型システムでの運用を考えている。
 試行予定時期は、宇城市と菊陽町の平成20年4月が最も早く、次いで嘉島町21年4月、荒尾市と天草市21年10月、植木町と多良木町22年4月、西原村23年1月、芦北町23年4月―と続く。
 本格運用予定時期については「熊本県CALS/EC基本構想」で運用目標年次に設定した平成23年度が最多。それ以前の導入を検討しているのは、菊陽町(21年4月)と宇城市(22年4月)、嘉島町(同)。
 近隣市町村の動向を見て足並みを揃えたいという意見が多く、県の運用状況を見極めてからという声も。
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 未検討は17自治体、導入効果に疑問も
 残り17自治体は未検討。特に町村は半数以上が未検討と回答しており、入札が少ない自治体ほど取り組みが遅れている傾向。
 理由(選択・複数回答)は、「コスト縮減(費用対効果)に疑問がある」が12自治体と最も多く、以下「電子入札導入のメリットがわからない」10自治体、「共同運営でも費用負担が大きすぎる」8自治体。
 また、「零細の業者は負担が大きい」「高速インターネット網が町内全域に整っていない」と、受注者側に配慮する意見もあった。
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 操作の習熟度で異なる意見
 熊本市で電子入札を経験している市内業者は、県工事にもスムーズに対応。段階的な導入で、経験者から操作方法などを聞き早めに対応している。
 電子入札の感想は、操作に慣れている業者は「落札結果が出るまでパソコンの前に拘束されるが、入札会場に行かなくていいのはコスト・時間的に助かる」と概ね評価。慣れていない業者は「操作が面倒くさい」「直接入札に行ったほうが早い」と否定的。
 電子化に対応していない業者は、「準備費用の負担が大きく、当面は紙入札も出来る」という理由を上げる。今後の対応については、「電子納品に比べ操作を覚えるのに時間がかからないので、発注機関の導入時期をみて対応すれば大丈夫」「入札は公共工事受注の入口の部分。発注機関の入札方法に合わせていく」と前向きに捉えている。
全国263団体が運用中〜電子入札コアシステムの開発・稼動状況〜
西日本高速道路が運用開始、最高裁・国立病院機構は開発段階
 コアシステム採用団体の半数以上がすでにシステムを運用している。電子入札コアシステム開発コンソーシアムがまとめた電子入札コアシステムの普及状況(1月10日時点)によると、採用団体450団体のうちシステムを運用(試行、実験含む)しているのは263団体に上る。9月30日時点に比べ、市町村を中心に50団体以上増えている。
 運用段階にある発注機関は、中央官庁8団体、公社・機構など5団体、都道府県36団体、政令指定都市13団体、その他市町村など201団体。9月以来、運用を開始した主な団体は、西日本など各高速道路株式会社のほか、千葉市―などがある。
 1月10日時点でシステム開発段階にある団体は、▽最高裁判所▽国立病院機構▽都市再生機構▽和歌山県▽沖縄県▽福島県▽鹿児島県共同利用43団体▽札幌市(契約手続き中)▽千葉県共同利用30団体▽静岡県共同利用39団体▽愛知県共同利用62団体▽兵庫県市間利用2団体▽岐阜県市間利用3団体。
電子納品
25自治体が検討中、3自治体は20年度試行へ
   〜受発注業者の負担増に懸念の声も〜
県、19年度は大半がレベル3 業務は本格運用
 県と南小国町、甲佐町が試行段階
 熊本県は現在、試行事業(受発注者間事前協議後)レベル2、パイロット事業(同)レベル3、実証フィールド実験(工事5000万円以上、設計業務・測量調査500万円以上、地質・土質調査200万円以上)レベル3を実施している。19年度はパイロット事業(受発注者間事前協議後)レベル3、実証フィールド実験(工事2500万円以上)レベル3、業務本格運用への取り組みを予定。20年度の工事本格運用を目指している。
 市町村では、南小国町が18年4月から業務のみレベル1で試行中。段階的に拡大し23年4月からの本格運用を目指す。甲佐町は17年4月から入札全てをレベル0で試行中。本格運用予定時期は未定となっている。
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 データの保管管理利用等を検討(県)
 県の電子納品運用は、第1段階の試行期(平成16〜19)にあり、データの保管管理・利用等を検討している。
 現在想定している業務改善は、@調査・計画、設計、工事施工などの各業務段階の最終成果品を電子媒体で納品することでペーパーレス化を実現し、成果品保管場所を省スペース化A各種情報ごとにデータベース化し、必要な情報の抽出が迅速にできるため、資料検索等の作業効率が向上B過去の各種情報を電子データ化し再利用することにより、資料(発注図面等)作成が容易となり品質が向上―を上げている。
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 25自治体が検討中、入札と同時進行も
 25自治体が電子納品を検討中。コンサル業務の場合、業者が積極的に電子成果品を提出するなど受注者が先行しており、自治体担当職員を恁F本県建設技術センターで研修させるなど技術レベルの向上に努めている。
 試行予定時期は、熊本、宇土、宇城の3市が20年4月と最も早く、次いで荒尾・天草市21年10月、植木・大津・嘉島町22年4月。電子入札と同時進行の場合が多い。
 本格運用予定時期は、電子入札と同様、基本構想で設定した運用目標年次の平成23年度が多い。それ以前の導入を検討しているのは、宇土市と宇城市の22年4月(予定)。
 今後は、電子入札と同様に、県の運用状況や受注者の動向を見極めながら慎重に取り組むとしている。
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 未検討は21自治体、業者の負担増懸念
 21自治体が未検討。電子入札では財政規模が小さい町村が多かったが、納品は4市も未検討と回答した。
 理由(選択・複数回答)は、「電子納品導入のメリットがわからない」が12自治体と最も多く、次いで「零細業者の負担が大きい」10自治体、「技術職員がいない」7自治体。電子入札に比べ、業者の人材・コスト負担を懸念する意見が多い。
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 電子納品連絡会議で自治体支援(県)
 県では、電子納品連絡会議を設置。県、市町村、受注者間での実務レベルでの連絡・意見交換の場を提供し、必要に応じて研修を行っている。
 今後も、すでに実施している恁F本県建設技術センターでの研修のほか、受発注者説明会や各種説明会等で、導入スケジュールや研修の実施など引き続き周知していく方針だ。
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 実際の工事での修得経験が不足
 電子入札のように容易には取り組めないようだ。慣れが必要だが、年に1回程度の受注では、レベルアップが図れず、だからといって全てを外注することも難しく、施工管理者の負担が大きいという。「紙での検査がはるかに早い」「自分たちが作った電子成果物が、本当に役立っているのか疑問。モチベーションが上がらない」という厳しい声も。
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 汎用ソフトが使えず苦慮
 熊本県がレイヤー構成など国交省基準を緩和したため、市販ソフトがそのまま使えずに苦慮。市町村導入時には、業者の負担が大きくならないよう基準の統一を求めている。
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 CAD操作が課題
 CADは他の納品と違いフォルダ名やレイヤ名などルールが複雑で、慣れるまでにかなりの時間が必要とされており、レベル3で求められるCAD図面提出が負担になっている。
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 将来の利活用みて電子化の有無を
 工事内容から電子成果物の将来利活用を見極め、電子化の有無を決めるべき―という声が大勢。「道路改良で、それぞれの管理者が保有する電線、ガスなど地下埋設物の情報が、共有・情報公開されれば、施工時に役に立つ」「除草や維持補修など軽微な工事は、直接、現場の状況を見ながら打ち合わせて工事を進めた方がはるかに現実的。CADも含め、本当に電子納品が必要なのか」―などの意見がある。
実施率が初めて9割超える
 熊本県は、電子納品試行事業実施状況のアンケート調査結果をまとめた。発注者(監督職員)を対象に、土木部が発注した18年4月1日から9月30日契約分の全事業を調査したもの。全体に対する電子納品(レベル0〜3)の実施率は約92%と、17年度に比べ8ポイント上昇。初めて9割を超えた。 
 事前協議を実施したのは1701件中1605件(協議不成立を含む)の94・4%。うち96・9%の1556件で電子納品を実施。事前協議後の電子納品実施率を機関別にみると、全ての振興局が90%以上となった。
 受注者が実施しなかった理由は、「作業手間が余分にかかる」が最も多く、「やり方がわからない」「ソフトが無い」「パソコンを持っていない」は大幅に減少した。
 工事・委託、県内業者・県外業者別の実施状況(協議成立率)では、県外業者は工事・委託とも初めて100%となり、県内業者も工事95・1%、委託98・6%と大幅に上昇した。
 レベル別でも県外業者は「3」の実施率が工事40・0%、委託77・0%と高いが、県内業者も工事20・3%(前回調査6・7%)、委託51・4%(同18・5%)と大きく伸びた。
 県内業者の発注額別実施レベルでは、金額が大きいほど「3」の実施率が高く、工事5000万円以上、委託500万円以上は全て。一方で、工事500万円未満、委託100万円未満でも「3」での実施が急増している。【詳細は県ホームページに掲載】。

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