C資金調達は建設業で培った信用平成15年11月20日新聞掲載
 「今は約300頭。年度内には600頭にして軌道に乗せますよ」。マルナカ工業(有)(球磨郡錦町)の中山正明社長は、2年前から(有)マルナカファームを設立し、酪農経営に乗り出した。現在生産高九州三位の酪農家にのし上がり、今後も設備投資をして酪農牛の購入を計画。先細りする建設市場に見切りをつけたというより、従業員や重機を適材適所に配置することを考えての選択だ。

 建設業が抱える問題の一つとして大きく現場が左右されるのが公共工事の平準化発注。ゼロ国債の導入などで改善されつつあるものの、現実は当初組まれる予算の年度内執行という〃慣例〃があるため時期が偏りがち。このため中山社長は暇なときに会社をフル稼働させるための手だてを模索していた。

 バブル経済の余力を残す十数年前から土地を買い求めていた中山社長は、これまで約五十ヘクタールを購入。「宅地開発か企業誘致として付加価値を付けて販売するつもりだった」。思惑通りに事が進まず手をこまねいている時期に友人から「広い敷地を利用して酪農をやってみないか」と誘われた。

 この時建設業がフル稼働する。牧場の建設に必要な資材は山毎買い取っていた土地から調達。搬入路の整備には自社の従業員、機材を牧場建設にシフトし、本業の建設業が忙しくなると現場に向かわせた。「直営なので半値で出来た」。

 酪農経営は素人だったので、栃木、大分など全国各地の先進地を視察した。農業専門のコンサルタントや専門の獣医とも契約し、餌のメニューなど、作業マニュアルを構築。効率的な飼育に努めた。

 その結果、酪農関係で売り上げ約3億5000万円を達成。年度内には牛を倍増させる計画で、順調にいけば約7億円の売り上げを見込んでいる。建設業の売り上げは年間約4億5000万円となっており、本業の建設業を酪農が凌駕する日も近い。

 「元々農業施策と建設業は切っても切れない仲。上手く歯車を合わせれば効率的に協業できる」。現在80人の従業員のうち60人を本業の建設業に、20人を酪農業に充てている。

 企業としての酪農には、多頭化による大規模経営が必要という。現在建設中の畜舎はそのための投資。畜産近代化リースなどの助成金を活用し全国でも数台しかないロータリーパーラー(搾乳施設)を導入した。最終的には全国でもトップクラスの1200頭を飼育目標としている。

 「異業種への参入は地域性を考慮した考え方が必要。色んな進出の仕方はあるが一番の問題は資金力。キチッとした計画書をつくって採算があれば銀行と話し合えばいい」。牛は担保にならない上、現金でないと売ってくれない。資金調達に苦労する日々だが、これまでの融資は「建設業で培った信用」。銀行の信用貸しには、オーナーの経営能力と手腕が問われることは言うまでもない。   
大規模経営で全国有数の酪農家へ

酪農経営に乗り出したマルナカ工業(有)の中山社長



現在建設中のロータリーパーラー



畜舎の建設は全て直営で。本業の建設業が活躍した

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