B異業種参入は情報収集と人脈が絶対条件平成15年11月13日新聞掲載
 「阿蘇地方の平均気温は東北と同じで、栽培には適しているんですよ」と話すのは、阿蘇郡一の宮町で建設業を営むクマレキ工業(株)の石橋敏弘代表取締役。建設業の売上高の減少を補う対策として、九州では難しいとされている山形県産サクランボ「佐藤錦」の栽培に力を入れ始めている。

 もともと趣味で20年前からリンゴの栽培などをしていたが、一般的に誰でも挑戦しやすいと言われている作物ばかりで、抜きん出ているとは言い難いものがあった。そこで思いついたのが「誰もできないことを」というキーワード。

 サクランボは、山形県にしばらく在住していたこともあって、以前から興味があった。当然、サクランボに適した山形県の気候についても知っている。「阿蘇は平均気温が低く工夫次第でおいしいサクランボが育つ」という確信もあった。それからは、当時、山形県で知り合った知人や専門家を訪ね歩き、技術を習得。自宅に試験用のハウスを建て、7年近く経った2001年、土地35アールを借り事業化へと本格的に動き始めた。

 サクランボは雨と風に弱い。特に阿蘇は風が強く、横殴りの雨がハウスに降り込むという。日頃からハウス上部に防風ネットを設置したり、水はけを良くする排水設備を施しているとはいえ、今年は五月に強風と多雨が続き、目標収穫200kgを大幅に下回る約30kgだった。「自然を相手にする仕事ですからね」と苦笑いするが、それでも実った粒は糖度も高く上々の出来と目を細める。

 本業の建設業はというと、売上げはピーク時の半分程度にダウン。今後も、公共事業への投資が落ち込む見通しの中で、社員の雇用を守るためにはどうすればよいかと常に考える。発注者側には「不良不適格業者をしっかり見極める力を備え、技術を伴わない業者は指名から外していくことが大切ではないか」と疑問を投げかける。「もう生き残るには公共事業に頼らない何かをやらなければいけないんです」。

 現在は、建設業の仕事の合間をみて、社員一人ひとりが畑に出てサクランボの手入れをするそうだ。そうすることで仕事に切れ目がなく、社員の働く場が生まれる。日々変化する栽培技術についても、今も変わらず社長自ら山形県まで足を伸ばし、情報収集を怠らない。そこで得た知識はすぐに社員へ伝えられ、社員も栽培のプロへと育つ。

 「異業種参入は、情報収集と人脈が絶対条件」。浅はかな知識で設備投資をしてもうまくいかない。経営者がまず、勉強を始めること。各分野の専門家を雇いアドバイスをうけるのもいいが、今いる人員で努力することも大切だと訴える。
社員一人ひとりが栽培のプロへ

クマレキ工業(株) 代表取締役
石橋 敏弘氏


「1日たりとも目を離すことができないんですよ」
と我が子のように桜桃木を眺める石橋社長



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