第6回 セルフヘルプ 〜天は自ら助くるものを助く〜平成15年5月5日新聞掲載
 「好景気の時は民間建築が伸び、不景気の時は公共土木が伸びる」建設市場は、つい数年前まで比較的安定していました。
 建設業は、危機になるたびに政府に助けてもらってきました。今でも、陳情すれば何とかなると思うご年配の創業者も多いようです。2代目、3代目の若手の経営者の危機感とは対照的です。

 しかし、建設業の縮小は、連載の初めに述べたように、社会構造の変化に伴う時代の流れです。2002年には年間約6000件もの倒産があり、この状況はますます厳しくなるでしょう。
 ここで大切なのは、セルフヘルプです。自分の足で立ち上がって、新たな市場を拓いていくことです。

 島根県・下垣工務所の下垣社長は、平成6年にブルーベリー栽培に乗り出した時、「当初、前例がないという冷ややかな行政側の対応に、自力でアメリカ、カナダ、欧州を調査し、日本における栽培技術を開発した」と言います。
 自力で立ち上がったことが功を奏し、今では5000本から14dの実を出荷する日本有数の規模となり、果樹栽培システムの特許を申請するまでになりました。
 農業のひもつき補助金に頼らなかった分、自由度も大きかったといいます。ブルーベリーの生産・加工・販売・観光・体験農園と多岐にわたるアグリビジネスを展開しています。

 しかし、現段階では、新分野に進出した企業はまだまだ少数派です。
 ほんの少し前まで、公共事業は甘い世界でした。働いた分だけちゃんとお金が出て、採算がとれていました。
 公共事業の仕組みに慣れると、ほかの産業は、厳しくて出て行く気にならないかもしれません。民間の商売では、収益がなければ給料も払えません。
 不安を増しながらも、じっと動かない経営者が目立ちます。しかし、倒産した後の経営者が、どれだけつらいか。一刻も早く、次の一歩を踏み出して欲しいと願っています。

 「天は自ら助くるものを助く」です。
 いつのまにか飼いならされ羊の群れのようになってしまった建設業。戦後の焼け跡から、自力で立ち上がった建設創業期の狼の猛々しさを、再度、取り戻して、新しい仕事を興してください。

農業生産法人を設立し、
現在14tのブルーベリーを出荷する
下垣工務所(島根県)



米田 雅子氏

略歴 山口県生まれ。昭和53年お茶の水女子大学卒後、新日本製鉄入社、構造解析システムを担当。平成7年から12年3月まで東京大学建築学専攻松村研究室。10年からNPO法人建築技術支援協会(サーツ)の常務理事・事務局長。また、NHK教育テレビ「21世紀ビジネス塾」で建設分野担当講師を務め、サーツでは新分野進出研究会を主宰。著書には、「建設業 再生へのシナリオ」(彰国社)などのほか、「NPO法人をつくろう」(東洋経済新報社)も。


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