第5回 キーワードは環境 〜みんなが幸せになる仕事を〜平成15年5月1日新聞掲載
 「これからは環境と健康が大切だ」と、北海道遠別町の北浜建設の有田社長は訴えます。有田氏は農薬を使わず有用微生物や堆肥を生かして農作物をつくる有機栽培に乗り出しました。この言葉は、周りを動かし、遠別町全体が「有機農業の里」に生まれ変わろうとしています。

 環境重視は、河川整備にも現われています。東京の佐藤道路は、草が自然に繁茂するポーラスコンクリートを使った護岸工法を開発しました。コンクリートの強度で「護岸」しながらも、環境重視の「植生」を同時に実現する工夫がなされています。

 筆者の本「建設業の新分野進出-挑戦する50社」の事例全般に共通するキーワードを一つあげるとすれば、それは「環境」です。
 20世紀は「開発」、21世紀は「環境」の時代だといわれますが、この傾向は進出事例に色濃く現れています。
 建設離職者などに対して、林業への転職を推進する「緑の雇用事業」が、和歌山県、三重県、北海道などで進んでいます。

 長野県は予算を増やして、森林整備事業を建設会社にオープンにしました。ただし、「きこり講座」を修了した社員が働くことが条件です。
 森林に入った方々の多くが、豊かな森林環境をつくりだすという目的を持って、間伐や下刈、植栽の仕事に取り組んでいます。
 20世紀に見られた「人間が自然を改造する」という近代的な開発重視の姿勢は、21世紀の「人間が自然と共生する」という環境調和型の姿勢へと変わり始めています。

 長野県のナチュレックスは、用途に困っている間伐材を使って、伝統工法を今に蘇らせた木工沈床を開発しました。
 清野社長は「つくることによって間伐が進み山が守れ、売ることによって川に生物が戻り自然が蘇る。そんな製品を仕事にできるなんて本当に幸せです」と言われます。今後とも、より良い環境をめざして、地元や現場のニーズに対応した製品開発に取り組みたいそうです。

 環境をキーワードにして見回せば、みなさんの周りにも、さまざまな問題が浮かび上がってくると思います。そこに、みんなが幸せになる新たな仕事があります。

間伐材を有効活用し、伝統工法蘇らせた
ナチュレックス(長野県)



米田 雅子氏

略歴 山口県生まれ。昭和53年お茶の水女子大学卒後、新日本製鉄入社、構造解析システムを担当。平成7年から12年3月まで東京大学建築学専攻松村研究室。10年からNPO法人建築技術支援協会(サーツ)の常務理事・事務局長。また、NHK教育テレビ「21世紀ビジネス塾」で建設分野担当講師を務め、サーツでは新分野進出研究会を主宰。著書には、「建設業 再生へのシナリオ」(彰国社)などのほか、「NPO法人をつくろう」(東洋経済新報社)も。


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