第4回 コミュニティビジネス 〜一歩先にニーズ〜平成15年4月28日新聞掲載
 700兆円という巨額の財政赤字を抱え、「小さな政府」をめざす動きが本格化してきました。行政組織のスリム化や規制緩和で、税負担を軽減し、民間の活力を高めなければなりません。
 しかし、小さな政府は公共事業の縮小も意味します。仕事の減少を嘆く建設関係者も多いことでしょう。

 ここで見方を変えてみることが大切です。小さな政府は、新しい市場を生み出しつつあるからです。
 官から民へと公共サービスがシフトしています。介護、高齢者生活支援、子育てサポート、教育、環境、起業支援、雇用促進などの地域ニーズに対応した事業、コミュニティ・ビジネスのニーズが確実に高まっています。これは、地元密着で小回りのきく中小建設業の強みが生かせる新分野だと思います。

 たとえば、長野県上田地域では、建設会社数社が中心となり、地域起業を支援するNPO「地域循環ネットワーク」を立ち上げました。
 建設汚泥や食品残渣の循環型リサイクル実証実験、ブルーベリーの近自然農法の開発、発芽玄米の試作などに取り組み、環境系の事業の立ち上げを支援しています。宮原政廣事務局長は「地域産業のインキュベーター(孵化器)としての役割を果たしたい」とがんばっておられます。

 島根県では、今井産業が、メールマガジンとケーブルテレビで地域情報を発信する「いまゐネット」を設立しました。1次産業と観光を組合せた旅行プランや、石見神楽などさまざまな地域情報を発信しています。今井聖造社長は、「地域の自立を願う産官学民の多くの仲間が後押ししてくれている。過疎地だからこそ、情報インフラの整備が重要だ」と言います。

 ちなみに、地方分権と小さな政府をめざして、市町村合併が進んでいます。合併による新庁舎建設などのミニバブルを期待する向きもありますが、建設会社にとってのビジネスチャンスは建設工事だけではありません。
 合併で住民サービスが低下すれば、そこには「コミュニティビジネス」のチャンスが生まれるのです。
 社会の変化の一歩先を見て、ニーズをつかみましょう。地域にとって有用な企業になることが何より大切です。

NPO法人 地域循環ネットワーク(長野県)による
建設汚泥リサイクル計画実証実験



米田 雅子氏

略歴 山口県生まれ。昭和53年お茶の水女子大学卒後、新日本製鉄入社、構造解析システムを担当。平成7年から12年3月まで東京大学建築学専攻松村研究室。10年からNPO法人建築技術支援協会(サーツ)の常務理事・事務局長。また、NHK教育テレビ「21世紀ビジネス塾」で建設分野担当講師を務め、サーツでは新分野進出研究会を主宰。著書には、「建設業 再生へのシナリオ」(彰国社)などのほか、「NPO法人をつくろう」(東洋経済新報社)も。


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