第3回 建設の枠をはずす 〜既成概念脱皮の発想が大事〜平成15年4月24日新聞掲載
 社会構造の変化とともに建設市場は縮小しています。しかし、陰りゆく市場を見ながら一緒になって暗い顔をしてもしようがありません。
 社会基盤の成熟、小さな政府、少子高齢化、開発から環境へなどの変化は、確かに従来型の建設事業を減らしていくでしょう。しかし、この社会の変化は、同時に新しいビジネスチャンスも生みだします。
 ここで大切なのは「建設という枠をはずす」ことです。建設にとらわれていては、土俵は狭くなる一方です。

 福島県建設業協会の佐藤会長は、「過疎の地方では、公共事業が減り、代わりに高齢化で介護ニーズが増えている。建設から介護にシフトするのは合理的な選択だ」と、介護ヘルパーの養成に乗り出しました。

 富山県では、中谷建設が、ダムの堆積土砂をリサイクルした細砂・多目的焼砂の製造・販売に乗り出しました。ダム建設の需要は減っても、ダムにたまる土砂は増える一方です。それを有効に再利用することは時代の要請といえるでしょう。

 北海道江差町の北海道開発は、公共事業が減少するなか、町で唯一のCADや画像処理ができる会社であることを生かし、ポスター広告へ乗り出しました。情報開示が重要性を増すなかで、近隣に同業も存在せず、事業は拡大しつつあり
ます。

 今、大切なのは、時代のの動きを読むことです。新しく生まれつつあるニーズをつかんで、自らを変えることが、生き残りにつながります。
 自己啓発書で有名なジョセフ・マーフィーの本に、同じ牢獄に繋(つな)がれた二人の男の話があります。一人は牢獄の窓から空の星を眺め、もう一人は土の床を見つめたといいます。出獄後の二人の人生が大きく明暗を分けたのは言うまでもありません。
 現在、建設業は長く暗いトンネルに向かっているように見えます。しかし、下を向かずに有望な市場を捜す努力を続けましょう。
 「介護」と「建設」という異業種のコラボレーションが、新しいバリアフリー空間を生みだすなど、従来の枠をはずせば、さまざまな相乗効果も期待できます。
 時代が大きく変化している今、既成概念にとらわれない発想がとても大切です。

観光産業と協調し、画像処理のノウハウを生かして
大きなサイズの看板も(北海道開発)



米田 雅子氏

略歴 山口県生まれ。昭和53年お茶の水女子大学卒後、新日本製鉄入社、構造解析システムを担当。平成7年から12年3月まで東京大学建築学専攻松村研究室。10年からNPO法人建築技術支援協会(サーツ)の常務理事・事務局長。また、NHK教育テレビ「21世紀ビジネス塾」で建設分野担当講師を務め、サーツでは新分野進出研究会を主宰。著書には、「建設業 再生へのシナリオ」(彰国社)などのほか、「NPO法人をつくろう」(東洋経済新報社)も。


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