第1回 公共依存から自立へ〜未来に夢を広げよう〜平成15年4月17日新聞掲載
 建設市場が縮小しています。しかし、この縮小は決して一時的ではありません。日本の社会構造が変化しているのです。

 90年代、日本の建設市場は、米国、欧州15カ国の合計を抜いて世界一の規模を誇りました。GDPに占める割合も約2割、先進国でありながら、発展途上国なみの高さでした。

 その背景には、社会資本整備だけでなく、中央から地方への富の分配や景気対策に公共事業を使う土建国家と呼ばれる仕組みがありました。

 今、政治的に経済的に膨張させられた建設業が、普通の産業に戻ろうとしています。地方分権と小さな政府の流れで、土建国家の仕組みは崩壊しつつあります。

 社会資本が成熟し、巨額の財政赤字を抱えた現在、中長期には半減も予想されます。

 建設企業の経営者は、この時代の流れを直視して、5年後、10年後を見すえて経営戦略をたてなければなりません。それは厳しい道となるでしょう。しかし、このまま何もしないで待っていても果報はやってはこないのです。

 本業を徹底強化するのも一つの選択です。しかし皆が本業で生き残れるわけではありません。建設という枠をはずして新たな分野を開拓するのも重要な選択肢です。

 「高齢化による耕作放棄が増えている」と、ビート栽培の農作業受託を始めた北海道・しずお建設の森岡部長。「間伐材から炭や木酢液やたい肥をつくり、炭焼きの廃熱で温室栽培する」循環型農業を始めた長野県三矢工業の安江社長。「廃木材を使ってシックハウス対策の炭板」を産学共同で開発した山梨県・山英建設の小松社長。「介護サービス日本一」をめざす山形県黒田建設の黒田社長。各地で多種多様な取り組みが始まっています。

 縮小する公共事業に依存していても、先細りになるだけです。新しい分野に目を向けて、未来に夢をひろげましょう。自ら事業を掘り起こそうと思えば、事業のタネは至る所にころがっています。

 公共依存から自立自助へ。「やってやれないことはない」で、活路を見いだしましょう。

 この連載では、数多くの事例をもとに、新分野進出のポイントを探っていきます。

農作業受託を始めた「しずお建設(北海道)」



米田 雅子氏

略歴 山口県生まれ。昭和53年お茶の水女子大学卒後、新日本製鉄入社、構造解析システムを担当。平成7年から12年3月まで東京大学建築学専攻松村研究室。10年からNPO法人建築技術支援協会(サーツ)の常務理事・事務局長。また、NHK教育テレビ「21世紀ビジネス塾」で建設分野担当講師を務め、サーツでは新分野進出研究会を主宰。著書には、「建設業 再生へのシナリオ」(彰国社)などのほか、「NPO法人をつくろう」(東洋経済新報社)も。


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